真子は、一年前に龍太郎と同じ会社を離れた。転職してからは、新しい仕事、新しい人間関係、新しい生活。毎日をこなしていくうちに、龍太郎との距離は少しずつ遠くなっていった。スマートフォンを開けば、龍太郎からのメッセージが届いている。最初の頃は、読むこともあった。
「元気ですか?」
「仕事、慣れましたか?」
そんな何気ない言葉だった。でも、返信はしなかった。嫌いになったわけではない。むしろ、だからこそ返信することが怖かった。一度返事をすれば、また以前のように話すようになるかもしれない。そうなれば、自分の中にある気持ちまで、はっきりしてしまうような気がした。ある夜、真子は龍太郎のタイムラインを何気なく開いた。また、メッセージが届いている。
「今日も一日、お疲れさまでした。」
真子は画面を見つめたまま、しばらく動かなかった。
「……まだ送ってくるんだ」
小さくつぶやく。そして、返信欄を開いた。
「ありがとう」
そこまで入力して、消した。
「元気です」
また消した。
結局、スマートフォンを伏せた。返事をしないことが、龍太郎を傷つけていることくらい、真子にも分かっていた。それでも、今は返せなかった。真子の心の中には、龍太郎への気持ちが完全に消えたわけではなかった。だからこそ、距離を置いていた。
「もう忘れてくれたかな……」
そう思いながらも、翌日になると、またタイムラインを開いてしまう。そこには、龍太郎からの新しいメッセージがあった。
「今度。食事に行きませんか」
真子はそれを読んで、ほんの少しだけ笑った。そして、誰にも見られないようにスマートフォンの画面を閉じた。
「……ごめんね、龍太郎さん」
その言葉だけが、部屋の静けさの中に残った。でも真子は打った。
「いつも返さないけど、返事書くのでLINE返してます。話聞くのに、ご飯食べに行ってもいいけど、1人じゃ……」
意を決して龍太郎は返信を打った。2020年春の出来事。
「いいよ」
「元気ですか?」
「仕事、慣れましたか?」
そんな何気ない言葉だった。でも、返信はしなかった。嫌いになったわけではない。むしろ、だからこそ返信することが怖かった。一度返事をすれば、また以前のように話すようになるかもしれない。そうなれば、自分の中にある気持ちまで、はっきりしてしまうような気がした。ある夜、真子は龍太郎のタイムラインを何気なく開いた。また、メッセージが届いている。
「今日も一日、お疲れさまでした。」
真子は画面を見つめたまま、しばらく動かなかった。
「……まだ送ってくるんだ」
小さくつぶやく。そして、返信欄を開いた。
「ありがとう」
そこまで入力して、消した。
「元気です」
また消した。
結局、スマートフォンを伏せた。返事をしないことが、龍太郎を傷つけていることくらい、真子にも分かっていた。それでも、今は返せなかった。真子の心の中には、龍太郎への気持ちが完全に消えたわけではなかった。だからこそ、距離を置いていた。
「もう忘れてくれたかな……」
そう思いながらも、翌日になると、またタイムラインを開いてしまう。そこには、龍太郎からの新しいメッセージがあった。
「今度。食事に行きませんか」
真子はそれを読んで、ほんの少しだけ笑った。そして、誰にも見られないようにスマートフォンの画面を閉じた。
「……ごめんね、龍太郎さん」
その言葉だけが、部屋の静けさの中に残った。でも真子は打った。
「いつも返さないけど、返事書くのでLINE返してます。話聞くのに、ご飯食べに行ってもいいけど、1人じゃ……」
意を決して龍太郎は返信を打った。2020年春の出来事。
「いいよ」



