千代子花火の12週間の恋

  ◆◇◆


  「カフェオレください……」

 
  「はい……」


 私はお気に入りのカフェオレをウェイトレスさんに注文して……ファミレスの席で頬杖をついた……人でごった返す夕方の街を眺めながら……


 正直、私が漫画を描きたいのは、それが自分にできる唯一のことで、簡単だからだ……誰かの奴隷になりたいわけでも、上司にキレられて怒鳴られたいわけでもない……でも今はもう、運命を受け入れるしかないのかもしれない……


  「あのさ、光輝(こうき)くん……メールで伝えた、前田先生が君に作画担当をつけてくれるって話なんだけど……実はそれ、別の作家の話でね……君じゃないんだ。ごめんね……」


  「は?……なんでですか!?……それはひどいですよ……」


 うーん?……誰か話してる声?……まあいいや……スマホでも見よ……


  「ごめんね……ちょっと技術的な手違いがあってさ……」


  「冗談やめてくださいよ!……僕はこのマンガのストーリーに、汗も時間も全部注ぎ込んだんですよ……なのになんでこんな適当なことになるんですか!?」


  「本当に申し訳ない……」


 え? 後ろの人、マンガの仕事の話をしてるの?


 さっきの話って何?……仕事を蹴られたってこと?……しかも説明まで間違ってたって……どこの雑誌だよ、そんな適当な仕事する担当を働かせて許してるなんて……


 自分が新人研修中だとでも思ってるのかな……


  「じゃ……じゃあ、僕はこれで……」


  「はあ……もうどこへでも好きに行けば……」


 後ろの男性の担当編集は、そそくさと店を出て行った……私はゆっくりと後ろに歩いて行った……