そして、十年が過ぎた。
打ち合わせを終えた美咲は、いつものように自宅マンションへ帰ってきた。
廊下に、引っ越し業者がいる。
大きな段ボール。
忙しそうに荷物を運ぶ人たち。
「……引っ越し?」
美咲は足を止めた。
そういえば、隣の部屋が少し前から空いていた。
誰かが引っ越してくるのだろう。
美咲は軽く会釈をして、自分の部屋へ向かおうとした。
そのときだった。
「すみません。少し通してもらってもいいですか?」
聞き覚えのある声。
美咲は、ゆっくりと振り返る。
そこにいたのは。
十年間、何度となく画面越しに見てきた人だった。
「……」
言葉が出ない。
男性は、美咲の顔を見ると、少しだけ笑った。
「久しぶり」
「……何してるんですか」
「引っ越し」
「それは見ればわかります」
「だよね」
「どうして……」
言葉が続かない。
「たまたま?」
愁が、少しだけ首を傾げた。
「……」
「うそ。やっと空いたから」
「えっ?」
「もうちょっとはやく戻ってきたかったんだけど、なかなか隣が空かなくて」
愁が笑う。
その笑顔に、息が止まりそうになる。
愁が、段ボールを持ったまま、美咲を見る。
そして。
「ただいま」
そう言った。
美咲は涙をこらえながら、笑顔で答えた。
「おかえりなさい
打ち合わせを終えた美咲は、いつものように自宅マンションへ帰ってきた。
廊下に、引っ越し業者がいる。
大きな段ボール。
忙しそうに荷物を運ぶ人たち。
「……引っ越し?」
美咲は足を止めた。
そういえば、隣の部屋が少し前から空いていた。
誰かが引っ越してくるのだろう。
美咲は軽く会釈をして、自分の部屋へ向かおうとした。
そのときだった。
「すみません。少し通してもらってもいいですか?」
聞き覚えのある声。
美咲は、ゆっくりと振り返る。
そこにいたのは。
十年間、何度となく画面越しに見てきた人だった。
「……」
言葉が出ない。
男性は、美咲の顔を見ると、少しだけ笑った。
「久しぶり」
「……何してるんですか」
「引っ越し」
「それは見ればわかります」
「だよね」
「どうして……」
言葉が続かない。
「たまたま?」
愁が、少しだけ首を傾げた。
「……」
「うそ。やっと空いたから」
「えっ?」
「もうちょっとはやく戻ってきたかったんだけど、なかなか隣が空かなくて」
愁が笑う。
その笑顔に、息が止まりそうになる。
愁が、段ボールを持ったまま、美咲を見る。
そして。
「ただいま」
そう言った。
美咲は涙をこらえながら、笑顔で答えた。
「おかえりなさい

