愁やBright Directionの仕事が増えたこと。
その陰には、彩香の存在もあった。
彼女が関わる企画に愁を起用してくれただけでなく、機会があるごとに関係者に、愁やBright Direction のことを推薦してくれていた。
彩香が、自分を支えようとしてくれている。
そのことには、心から感謝していた。
だからこそ。
これ以上、曖昧なままでいるわけにはいかなかった。
「話したいことがある」
打ち合わせのあと、愁は彩香に声をかけた。
「俺やBright Directionのために、たくさん動いてくれてありがとう」
「……ううん。私が勝手にやりたくてやってるだけ。それに、結果を出したのは、愁たちの力よ」
「それでも、本当に感謝してる」
愁は、一度言葉を切った。
「……でも、だからこそ、いつまでもこのままじゃだめだと思う。」
彩香の肩が、微かに震えた。
「単刀直入に言うね」
まっすぐに彩香を見つめる。
「俺は、十年前のように彩香さんを想うことはできない」
「……」
「ごめん」
「……謝らないで」
彩香は少しだけ笑った。
けれど、すぐに真顔になり、愁に視線を戻す。
「私、待てるよ」
突然、彩香がそう言った。
「愁が言うように、もう一度トップを目指す間……その間、待てるよ」
「彩香さん……ありがとう。でも、待たなくていい」
彩香の瞳が、不安そうに揺れる。
「前にも言ったけど、俺は今、誰かと付き合うとか、そういうことは考えられない」
「……うん」
愁は彩香から視線をそらさず、続けた。
「でも、いつか、そういう時がきたら……その時、隣にいてほしいのは、彩香さんじゃないんだ」
長い沈黙のあと、彩香は涙がこぼれそうになるのをこらえながら、声を絞り出した。
「……そっか」
「ごめん」
「だから、謝らないで」
また、しばらく沈黙が流れた。
「……これで、やっと終わらせられる」
彩香が、ぽつりとつぶやいた。
十年前から、ずっと消化できずにくすぶっていた思い。
もしも、あの時逃げずに愁を選んでいたら──。
そんな『もしも』を何度も考えた。
「でも、違った」
彩香は自分に言い聞かせるように続けた。
「私たちは、あの時、終わってた。ただ、それを認められなかっただけ」
彩香はひとつ息を吐いて、
「好きだったよ」
と言った。
「十年前、ちゃんと愁が好きだった」
「俺も。本当に、彩香さんのことが好きだった」
「うん。知ってる。……ありがとう」
彩香は、まだ少しだけ泣きそうな顔で笑った。
「いいかげん、私も前に進まなくちゃね」
過去にしがみつくのではなく、未来へ。
「これからも頑張ってね。」
「ありがとう」
「トップになって」
「なるよ、絶対」
「うん」
彩香は、もう一度だけ、愁をじっと見つめた。
「……じゃあね」
彩香は愁に背を向けて歩き出した。
もう、愁の方を、一度もふり返らなかった。
「……さよなら」
彩香は小さくつぶやいた。
その陰には、彩香の存在もあった。
彼女が関わる企画に愁を起用してくれただけでなく、機会があるごとに関係者に、愁やBright Direction のことを推薦してくれていた。
彩香が、自分を支えようとしてくれている。
そのことには、心から感謝していた。
だからこそ。
これ以上、曖昧なままでいるわけにはいかなかった。
「話したいことがある」
打ち合わせのあと、愁は彩香に声をかけた。
「俺やBright Directionのために、たくさん動いてくれてありがとう」
「……ううん。私が勝手にやりたくてやってるだけ。それに、結果を出したのは、愁たちの力よ」
「それでも、本当に感謝してる」
愁は、一度言葉を切った。
「……でも、だからこそ、いつまでもこのままじゃだめだと思う。」
彩香の肩が、微かに震えた。
「単刀直入に言うね」
まっすぐに彩香を見つめる。
「俺は、十年前のように彩香さんを想うことはできない」
「……」
「ごめん」
「……謝らないで」
彩香は少しだけ笑った。
けれど、すぐに真顔になり、愁に視線を戻す。
「私、待てるよ」
突然、彩香がそう言った。
「愁が言うように、もう一度トップを目指す間……その間、待てるよ」
「彩香さん……ありがとう。でも、待たなくていい」
彩香の瞳が、不安そうに揺れる。
「前にも言ったけど、俺は今、誰かと付き合うとか、そういうことは考えられない」
「……うん」
愁は彩香から視線をそらさず、続けた。
「でも、いつか、そういう時がきたら……その時、隣にいてほしいのは、彩香さんじゃないんだ」
長い沈黙のあと、彩香は涙がこぼれそうになるのをこらえながら、声を絞り出した。
「……そっか」
「ごめん」
「だから、謝らないで」
また、しばらく沈黙が流れた。
「……これで、やっと終わらせられる」
彩香が、ぽつりとつぶやいた。
十年前から、ずっと消化できずにくすぶっていた思い。
もしも、あの時逃げずに愁を選んでいたら──。
そんな『もしも』を何度も考えた。
「でも、違った」
彩香は自分に言い聞かせるように続けた。
「私たちは、あの時、終わってた。ただ、それを認められなかっただけ」
彩香はひとつ息を吐いて、
「好きだったよ」
と言った。
「十年前、ちゃんと愁が好きだった」
「俺も。本当に、彩香さんのことが好きだった」
「うん。知ってる。……ありがとう」
彩香は、まだ少しだけ泣きそうな顔で笑った。
「いいかげん、私も前に進まなくちゃね」
過去にしがみつくのではなく、未来へ。
「これからも頑張ってね。」
「ありがとう」
「トップになって」
「なるよ、絶対」
「うん」
彩香は、もう一度だけ、愁をじっと見つめた。
「……じゃあね」
彩香は愁に背を向けて歩き出した。
もう、愁の方を、一度もふり返らなかった。
「……さよなら」
彩香は小さくつぶやいた。

