その青は沈む

 それから、また僕は忙しくなって、やっと休みを貰った。それなのに朝早くに起きてしまって、窓の外を見たら、天気もいいし、洗濯をしようと思った。

 一つずつ服のポケットを探って、確認してから、洗濯機へ放り投げる。裏返しになった靴下や下着なんかを戻して、同じように投げた。

 そして、次に綿のパンツを持って、ポケットを探ったときだった。何かが指先に当たって、取り出してみたら、夏祭りで妹から貰ったストラップが出てきた。

 忘れていたわけじゃないけど、忙しさに気を取られていた。どこに付けようか迷いながら、リビングに向かって、テーブルの上にある携帯の脇に置いた。

 そして、洗濯の続きをしてから、一走りしようかと思って、軽装に着替えた。玄関を出る時に、帽子を目深に被り直して、そっと外へ出た。

 外はとても穏やかで、空気が澄んで気持ちよかった。軽く体をほぐしてから、足を踏み込んで、走り出した。流れる景色や、すれ違う人。ランドセルを背負った子どもに、制服を着崩した学生たち。少し疲れてそうなサラリーマンやスーツを着た女の子。皆がそれぞれの場所へ向かっていた。

 それを横目に見ながら、ときどき妹を思い出して、少し笑った。近くの公園で足を止めて、水を飲んでから、来た道を家に向かって走っていく。

 お昼は何を食べようか、寝るまで映画でも観ようかと考えながら、少しペースを落として走った。
部屋に着いて、洗濯機から服をカゴに入れ、ベランダに出た。一つずつ干して、終わったあとで、思い切り空気を吸い込んで吐いた。

 その時、風に乗って火薬の匂いがした。どこかで花火を上げてるのかと思ったけど、空は青くて、雲ひとつなかった。

 ほっとしたらお腹が鳴って、何か頼もうとリビングに向かった。携帯を手にしたら、彼からメールが来ていた。

『仮歌は出来てる。余裕あるなら来い』

 文面を読んでるうちに、素直じゃないなと思った。けど、気遣ってくれたことが嬉しくて、次の休みに行こうと思った。

 そして、携帯で食事を頼んで、台本を手にしてから、台詞を読み返した。何度も繰り返すうちに、チャイムが鳴った。

 モニターで確認したら、少し遠目に背の高い男が立っていた。

『いや、遠』とか思いながら、一言掛けてロックを外した。

 それから少しして、またチャイムが鳴って、モニターで確認したら、今度は男が、少し柄の悪そうな立ち方をしていた。

『いや、こわ』とか思ったけど、袋を持ってたから、玄関を開けにいった。