「どうしました?元の世界に戻るか迷ってます?」
いつも白衣を着ている研究員のハクさんに聞かれた。
眼鏡をかけていて、顔が見えづらい。
「あ、はい……少し」
「でも、あなたは若いし戻ったほうがいいんじゃないですか?」
言葉に詰まる。
出そうとした言葉を出しては飲み込み……を繰り返した。
「まだ心残りがあるんですね?」
ハクさんには、バレバレのようだ。
「あの…………私、レイっていう人のところに一月ほど住まわせてもらって居たんですけど………」
ハクさんは、ああ、と声を漏らした。
心当たりがあるようだ。
「レイってまさか………山奥のでかい屋敷に住んでる?」
「はい………」
「やっぱり、レイか………」
何かをぼそっと呟いたハクさん。
「何か言いました?」
そう聞いてみると。
「いえ、なんでも。」
誤魔化されてしまった。
胸がざわざわとしていた。
これから何か始まりそうな、そんな気がする。


