恋は目をそらしたその先に ー夏祭り編ー

それをじっと見ていたことに気づいたのか、りくが笑った。


「そんな見る?」


「み、見てない!」


「めっちゃ見てたけど。」


「……見てないってば。」


「はいはい。」


からかうような声。


でも、その表情はどこか嬉しそうだった。


二人の間に、少しだけ静かな時間が流れる。


夕暮れの空は、昼間よりも淡い色をしていた。


まだ明るさを残しているのに、遠くの空には夜の気配が少しずつ混ざっている。


神社へ続く道の向こうから、祭りの音が聞こえてきた。


太鼓の音。


人の話し声。


屋台から漂ってくる甘い匂い。


「行こっか。」


りくが言った。


「うん。」


歩き出した二人の距離は、思っていたより近かった。


けれど、手はまだ繋がっていない。


あと少し。


手を伸ばせば届く距離。