恋は目をそらしたその先に ー夏祭り編ー

第2話「浴衣と待ち合わせ」


「似合ってる……。」


りくの口からこぼれた言葉は、あまりにも小さかった。


「……ほんと?」


聞いた瞬間、急に恥ずかしくなった。


さっきまで家で鏡の前に立っていたときは、もう少し平気だったのに。


こうして本人を目の前にすると、自分がどんな顔をしているのかさえ分からなくなる。


りくはしばらく何も言わなかった。


その沈黙が、ゆいには妙に長く感じられた。


やっぱり変だったのかな。


帯の結び方、おかしくないかな。


髪型も、もっと違うほうがよかったかもしれない。


そんなことばかりが頭の中を駆け巡る。


「浴衣。すごい似合ってる。」


りくは少し照れたように笑った。


いつものような軽い笑い方ではなかった。


そのことが、余計にゆいを困らせる。