恋は目をそらしたその先に ー夏祭り編ー

ゆいの胸の中では、さっきの言葉だけが何度も繰り返されていた。


俺は好き。


たったそれだけ。


でも、その「好き」が今は、自分に向けられている。


それが、まだ少し信じられない。




駅に着く。


昨日も、ここで別れた。


でも今日は、昨日ほど寂しくなかった。


また明日会えるから。


そう思えるようになったから。


「じゃあ、また明日。」


りくが言う。


「うん。また明日。」


ゆいが手を振る。


そのまま歩き出そうとしたとき。


「ゆい。」


また呼ばれた。


振り返る。


「なに?」


りくは少しだけ迷うようにしてから、


「……昨日、手繋げてうれしかった。」


ゆいは目を丸くした。


「……私も。」


「そっか。」


りくが笑う。


それだけだった。


けれど、ゆいは家に帰るまで、その笑顔を忘れられなかった。


昨日は特別な夜だった。


花火も、屋台も、浴衣も。


全部が夢みたいだった。


でも、


今日の帰り道も、昨日と同じくらい大切だった。


特別なことなんて何も起きていない。


ただ、一緒に歩いて。