恋は目をそらしたその先に ー夏祭り編ー

それだけなのに、胸の奥がふわっと軽くなる。


「ゆい、今りく見てたでしょ。」


隣の友達が言った。


「えっ?」


「顔に出てた。」


「出てないよ。」


「出てる。」


「……。」


ゆいは黙ってお弁当を見る。


昨日のことを知られたくないような、でも少しだけ誰かに話したいような。


そんな不思議な気持ちだった。




放課後。


教室を出ると、廊下の窓から夏の光が差し込んでいた。


帰る生徒たちの声が遠ざかっていく。


ゆいが靴箱へ向かっていると、


「ゆい。」


後ろから声がした。


振り返る。


りくだった。


「一緒に帰ろ。」


「……うん。」


たったそれだけの会話。


でも、昨日までとは違う。


付き合う前なら、この一言だけで何日も悩んでいたかもしれない。


今は、隣を歩くことが自然になり始めている。


それが少し嬉しかった。


校門を出る。


蝉の声が、また聞こえてくる。


「昨日さ。」


りくが言った。


「うん?」


「写真見返してた。」


「……私も。」


「ほんと?」


「うん。」