恋は目をそらしたその先に ー夏祭り編ー

まただ。


こういうところ。


何気ない顔をして、心臓に直接届くようなことを言う。


「……りくって、ずるい。」


「今日それ何回目?」


「知らない。」


ゆいは笑った。


すると、りくも笑う。


それだけで、帰りたくないという気持ちが少しだけ強くなった。


「じゃあ……また学校で。」


「うん。」


ゆいが手を離そうとした、その時


「ゆい。」


「……?」


呼び止められる。


振り返ると、りくがこちらを見ていた。


「来年も、一緒に行こうな。」


ゆいは少しだけ驚いた。


そして、笑った。


「うん。」


「約束。」


「約束。」


今度は言葉だけ。


それなのに、胸の中には小さな光が残った。


「じゃあ、気をつけて帰って。」


「りくもね。」


手を振る。


りくが改札の向こうへ歩いていく。


ゆいも反対方向へ歩き出した。


何度か振り返りそうになったけれど、やめた。


振り返ったら、また帰れなくなりそうだったから。


家に帰ると、部屋はいつもと同じだった。


机も。


ベッドも。