加納欄のオレオレ詐欺

「一億?」

婆ちゃんの声に、電話の向こうの男が黙った。

「それでええのか?」

『……え?』

「それで、うちの孫を無傷で返してもらえるのか?」

『あ、ああ。もちろんですよ』

婆ちゃんは受話器を握り直した。

「孫の声を聞かせてくれ」

『今は別室にいるんでね。丁重に扱いますよ』

「そうか」

『ただし、このことを警察に話したら……』

「わかってる」

婆ちゃんは欄たちをちらりと見た。
 
「警察なんか当てにならない。金で済むんやったら、それでいい」

『物分かりのいい婆さんで』

男の声が少し明るくなる。

『そしたら、また連絡する』

ガチャン。

電話が切れた。

その瞬間、高遠が振り返った。

吉井さんが。

「逆探に成功したそうだ。 今、祥子君が向かった」