君のとなり〜拓実と〜

 連休は、あっという間だった。

瑠夏と一緒にいられる時間が、こんなに早く過ぎるなんて思わなかった。

街を歩いたり、くだらないことで笑ったり。

ただ隣にいる。

それだけのことが、こんなに幸せだった。

離れてから、ずっと思っていた。

早く、瑠夏に会いたい。

その願いが叶って、また隣に瑠夏がいる。

それなのに、もう帰らなきゃいけない。

……寂しいな。

そんなことを考えながら、連休中、瑠夏が通っている新体操クラブへ一緒に行った。

そこで見たのは、想像していた以上にハードな練習だった。

勉強に、学校の部活。

それに、この練習。

想像するだけでもハードだ。

……そりゃ、痩せるわけだ。

瑠夏は、俺がいない間もこんなに頑張っていたんだ。

そう思うと、胸が少し苦しくなる。

「瑠夏、無理するなよ」

そう言っても、きっと瑠夏は、

「無理してないよ」

って笑うんだろう。

たぶん、本当にそうなんだと思う。

今の瑠夏にとって、新体操は大切なものだから。

だから、俺が止めるんじゃない。

瑠夏が頑張りたいと思っているなら、俺は応援したい。

瑠夏が笑っていられるように。

瑠夏が自分らしくいられるように。

それが、今の俺にできることだと思った。

……大好きだな。

改めて、そう思った。

離れてみて、余計に分かった。

瑠夏が俺にとって、どれだけ大切なのか。

そばにいるときは当たり前だった。

学校で顔を見て、話して、帰り道を一緒に歩く。

それが全部、当たり前じゃなかった。

会えなくなって初めて、その一つ一つがどれだけ幸せだったのか気づいた。

だから、これからも大切にしたい。

どんなに離れていても。

俺の大切な瑠夏を。

夜遅くまで練習した日は、必ず家まで送った。

「送ってくれてありがとう」

「うん。また明日」

玄関先で瑠夏のお母さんに会えば、きちんと頭を下げる。

「おやすみなさい」

「拓実くん、ありがとう」

「いえ」

瑠夏の隣にいられる時間は、あと少し。

だからこそ、一分一秒も大切にしたかった。

そして――

連休最後の日。

俺は瑠夏と一緒に、新幹線のホームにいた。

もうすぐ、関東へ戻らなきゃいけない。

「……今度は、いつ会えるかな」

瑠夏が小さな声で言った。

俺も、同じことを考えていた。

「夏休みには帰るよ」

「本当に?」

「うん」

瑠夏の目を見つめる。

「約束する」

瑠夏が嬉しそうに笑った。

「約束ね」

「うん。約束」

俺は瑠夏の手を握った。

本当は、離れたくない。

このまま、ずっと瑠夏の隣にいたい。

でも、それができないなら――

次に会える日まで、俺も頑張ろう。

瑠夏にまた笑って会うために。

新幹線がホームに入ってくる。

俺は瑠夏を抱きしめた。

「じゃあ、また夏に」

「うん。待ってる」

腕を離す。

名残惜しくて、もう一度、瑠夏を見る。

「瑠夏」

「ん?」

「大好きだよ」

瑠夏の頬が、少し赤くなる。

「……私も」

その言葉だけで、胸がいっぱいになった。

新幹線へ乗り込む。

窓から見る瑠夏に、手を振る。

瑠夏も笑って手を振ってくれる。

その姿を見ながら思う。

離れていても。

会えない日があっても。

俺の気持ちは変わらない。

大切な瑠夏を、ずっと大切にしたい。

そして――

夏休みには、また会いに帰る。

それまで、頑張ろう。

瑠夏。

次に会う日まで――

元気でいて。

俺の大切な人。