『後輩の女の子が私と話したがってるって、クラスの陸上部の子から連絡来て』
『昨日学校で私と一緒にいた男子のことが知りたいんだって』
『ナツ君のことだよね。なんて説明すればいい?』
『ファミレスに呼ばれたの』
しまった。やっぱ言っとくべきだった。
ちゃんと断ったのに。
すぐに電話して、告白のことを伝えてなかったことをまずは謝った。
「俺が好きなのは紗知だけだから」
ちゃんと断ったし、不安になることなんかひとつもないからって言ったけど、紗知は深呼吸してそっかぁ、って相槌を打ったきり黙り込んでしまった。
「俺のことは彼氏だって言ってよ。名前は教えたくないってほんとのこと言えばよくない? あとほら、あれ見せるとか」
紗知はハテナ声。
『何見せたらいいの?』
「キスマーク」
『!!!!』
「消えないうちに」
冗談のつもりだったんだけど。
『そんなの無理だよ……でも……』
「でも……?」
ここで逆接が入ったことなんか今までなかったのに、紗知ははっきり言い切った。
『ナツ君を取られたくないから、見せてくる……モヤモヤしてるの、やだ』
マジで言ってる?
ていうか、嫉妬してる?
そんなの、想像もしてなかった。
『だってこれ見たら諦めてくれると思う。どうしても諦めて欲しいから、見せる。だってナツ君は、わっ、私の彼氏だから……』
恋人の自覚、ちゃんと芽生えてたみたい。だけど両極端すぎるんだって。
無自覚で無邪気に煽るの、天性でやってんだもん。
思わずしゃがみこんで頭を抱えてしまった。
「彼女以外の女の子に興味ないって、あの子にそう伝えといて。たぶんそれで丸く収まるから。俺が好きなのは紗知だけだから」
なんとかそれだけ言ったけど、電話を切ってもしばらくその場から動けなかった。
だってファミレスであの子にあれ見せるとか嘘でしょ、あり得ない。
妬いてんの可愛すぎだって。
脱力しすぎてもう今日の仕事は無理。
俺をこんなにした責任、やっぱ取ってくれる?
End



