王子様になりたい ~王子様の恋愛指南~

 入社して三年目。
 加藤先輩に勧められたスターちゃんのイベントまで、あと三日。
 未だ、私は藤島さんを誘えていない。
 日曜日の予定を取り付けるため方法を模索しているからだ。
「デートをしてほしい」と素直に言うべきか。
 いや、彼女は恋愛に疎い節がある。
 直接的な言葉を使えば、この「同期」という関係さえ終わってしまうだろう。
 椅子にもたれかかり、大きく身体を伸ばす。
 そのとき、モニターに一件の通知が表示された。

『今月の営業成績のお知らせ』

 あぁ、今日だったか。通知にカーソルを合わせて、メッセージを開いた。

『一位——齋藤慎司』

 三年も経ってしまえば、特に感じることもない。
 ただ、淡々と結果を受け止めるだけ。

『五位——藤島明花』
「……っ!」

 初めて、心が動いた。心臓がうるさいほどドクドクと跳ねている。

『私も頑張りますから、見ててくださいね』

 藤島さんの努力が、ついに報われた。
 営業成績表には、私と彼女の名前が並んでいる。
 今日ほど、自分の順位を誇らしいと感じたことはない。

「おめでとう、藤島ちゃん!頑張ったね!」
「ありがとうございます、加藤先輩!」

 いつもよりも弾んだ声に、はにかんだ笑顔。
 藤島さんの全身から喜びが溢れている。
 デスクモニター越しに彼女を眺めていた、そのときだった。

「齋藤さん、今日も一緒に飲みに行きませんか!」

 今にも飛び跳ねそうな勢いのまま、藤島さんに誘われた。
 普段の真面目な性格では考えられないほど、感情が前面に現れている。
 彼女の新しい一面を見られたことに、私も舞い上がってしまいそうだ。

「あぁ、もちろん」

 こちらとしても、願ってもない展開だ。
 今日の飲み会で、私たちの関係は変わる。
 その時が待ち遠しかった。