私——齋藤慎司は、昔から周囲の関心を引きやすい人間だった。
容姿や振る舞いを褒められることが多く、いつしか周囲からは「王子様」と呼ばれるようになっていた。
それは、社会人になった今も変わらない。
入社して一週間。研修として名刺交換の練習が設けられた。
レクチャーを受けた後、先輩を相手に実践演習を行うものだ。
私は、特に苦労することはなく先輩方から合格をいただいた。
「あ、あの藤島明花です。よ、よろしくお願いいたします」
私の横で、全身が震えている同期——藤島明花が先輩から指導を受けていた。
その後、藤島さんは何度か実践演習を繰り返すが全て失敗。
本人曰く、緊張で敬語が出てこなくなるらしい。
彼女は、明日の補習対象になった。
「ど、どうしよう。せっかく社会人になったのにこのままだとクビになってしまう……」
余程追い詰められているのだろう。会議室の隅で俯きながら、一人で敬語を呟いている。
その姿を見ていると、どうしても放っておけなかった。
「よかったら、一緒に練習しようか」
見かねた私が声をかければ、藤島さんが顔を上げた。よく見ると、目が潤んでいる。
「いいんですか……!」
「もちろん、同期として私を頼ってほしい」
「ありがとうございます!……よろしくお願いします」
ほっとしたのか、藤島さんは胸に手を当てて朗らかに笑った。
研修ではあれほど緊張していたはずなのに、少し話せばこんなにも素直な笑顔を見せてくれるのか。
私に向けられたその笑顔が——なぜだか心に残った。
容姿や振る舞いを褒められることが多く、いつしか周囲からは「王子様」と呼ばれるようになっていた。
それは、社会人になった今も変わらない。
入社して一週間。研修として名刺交換の練習が設けられた。
レクチャーを受けた後、先輩を相手に実践演習を行うものだ。
私は、特に苦労することはなく先輩方から合格をいただいた。
「あ、あの藤島明花です。よ、よろしくお願いいたします」
私の横で、全身が震えている同期——藤島明花が先輩から指導を受けていた。
その後、藤島さんは何度か実践演習を繰り返すが全て失敗。
本人曰く、緊張で敬語が出てこなくなるらしい。
彼女は、明日の補習対象になった。
「ど、どうしよう。せっかく社会人になったのにこのままだとクビになってしまう……」
余程追い詰められているのだろう。会議室の隅で俯きながら、一人で敬語を呟いている。
その姿を見ていると、どうしても放っておけなかった。
「よかったら、一緒に練習しようか」
見かねた私が声をかければ、藤島さんが顔を上げた。よく見ると、目が潤んでいる。
「いいんですか……!」
「もちろん、同期として私を頼ってほしい」
「ありがとうございます!……よろしくお願いします」
ほっとしたのか、藤島さんは胸に手を当てて朗らかに笑った。
研修ではあれほど緊張していたはずなのに、少し話せばこんなにも素直な笑顔を見せてくれるのか。
私に向けられたその笑顔が——なぜだか心に残った。
