王子様になりたい ~王子様の恋愛指南~

 レジには長蛇の列ができており、会計に随分と時間がかかってしまった。
 キーホルダーを二つ、それぞれ透明の小袋に入れてもらい急いで店を出る。

「慎司さん、お待たせしてすみません」

 壁に寄りかかっていた慎司さんへ駆け寄ると、彼もこちらまで近づいてくれた。

「さっきまで私も店内を見ていたから、気にしないで」
「そんなにスターちゃんを気に入ってくれたんですか」

 レジへ向かう直前の反応が少し気になっていたけれど、喜んでもらえてよかった。

「明花に好きになって欲しいと言われたら、ね」

 女性客や子供たちに囲まれながらスターちゃんを見つめる慎司さんを想像すると、思わず頬が緩んだ。
 王子様が可愛いキャラクターを愛でている図は、何とも絵になる。

「では、このキーホルダーは記念品です。お揃いですね」

 私は慎司さんに小袋を渡した。
 彼の手のひらには、はにかみ顔のスターちゃんが収まっている。

「あぁ、大切にするよ」

 スターちゃんをそっと撫でた後、彼は丁寧な所作でバッグにしまった。
 こんな大切に扱ってもらえるとは。私も買ってよかったな。

「……私からのわがままを一つ、いいかな」

 私の手が、慎司さんの手のひらにゆっくりと掬われた。
 その優雅な所作に思わず見とれていると、彼は目を細め、

「今日一日、私と手を繋いでほしい」

 そう囁くと、彼は一本ずつ私の指の間へ自分の指を絡めていった。
 握られた手のひらから感じる、私とは違うしなやかだけど固い指先。
 彼の体温が移ったのか、繋いだ手が徐々に熱くなってくる。

「わ、わかりました。よろしくお願いします」
「ふふっ、ありがとう」

 ここまでされてしまえば、もう断るなんてできないじゃないか。
 そんな恨み言を心の中で呟きながらも、緊張で言葉にはできなかった。

「慎司さん、次はどこに行きますか」

 手から意識を逸らそうと、話題を振ってみる。
 向かう先を考えているのか、慎司さんは少しだけ天井を見上げていた。

「そうだね……よければ私の買い物に付き合ってくれないかな」
「ぜひ」

 こくりと頷けば、彼は私の手を引いた。

「では、一緒に行こうか」

 一体、彼はどんな物が欲しいのだろう。
 次の場所を想像すれば、私の足取りは自然と軽くなった。