溺愛、しないで


私は青島さんが言ったことをすぐに理解出来なかった。


しかし、ゆっくりとその言葉が染み込んでゆけば、先程までの歓喜が嘘のように消えていく。


銭次が携帯を取り出して操作し始めるが、画面を見つめるその目はもうすでに冷たく据わっており、ふと地下で聞いた銭次の言葉を思い出した。


青島さんが気に入らないと言えば、それが俺達の動く理由に……。


そこで、青島さんが言ったことは冗談でも何でもないことを知り、私は目を見開いてまた言葉を失ってしまった。


「ええーと、変態ジジイは〜っと」


「お前それで登録してんのか?バレたら切られんぞ」


「あー大丈夫っス。あの変態(ジジイ)は女、それも十七歳以下にしか興奮しないらしいんで。前に言われたことあるっス」


「今日一どうでもいい情報を聞いたな」


「っや、やだ、待っ……」


「ふ、足がなくなるのは嫌か?なら選べ、俺のことを好きというか、それとも……?どっちを選んでも構わないぜ?ショーは見に行ってやるよ」


斬人が薄く笑う。


……何が、話せば分かってくれる人、だ。


色濃い絶望が涙となって溢れ出し、頬を伝って布団を濡らしていく。


最初から、選択肢なんて用意されていなかった。


無防備に涙を流している自分を見て、少しでも罪悪感を覚えてくれないかという私の浅ましい考えは、目を細めている青島さんを見て通用しないと心の底から思い知る。


「俺には泣いても無駄だって理解したか?なら、さっさと決めてくれ」


意地悪い笑みを溢す斬人が心底憎かった。


制服の袖でゴシゴシと涙を拭き、何とかこの理不尽を飲み込もうとしていると、その手を斬人に掴まれて止められる。


「あんまり擦るな。腫れる」


子供をあやすような優しげな声音に苛立ち、私は強くその手を振り払った。


もう二度とこの人達を信じたりなんかしない。


どうして私を恋人だって勘違いしてるのか知らないけど、なんとかして絶対別れてやるから……!


「……好きです」


「俺も一千映のことが好き」


私の初めての告白は、愛だとかそんなものとは程遠い絶望に彩られた挙句、性質(たち)の悪い男に奪われてしまったのだった。