銭次は証拠がなければ警察は動かないと言っていたが、通報すれば立派な誘拐の現行犯ではないだろうか。
私は天啓がきたとばかりに目を輝かせるが、ふと狭川さんがスーツの内ポケットを弄りだす。
そして、そこから出てきたのは私の携帯だった。
「お見通しっス」
「か、返し、っていうかなんで帰れないんですか!?」
「お前は俺の恋人だろうが。側にいろ」
思わず声を荒げてしまったが、突然地を這うような低い声が聞こえ心臓が跳ね上がり、私はそれ以上何も言えなくなって不自然に視線を彷徨わせながら俯いた。
──室内に殺伐とした空気が満ちる。
こんな空気ではもう話し合いどころではないが、このまま何も言わなければ恋人という体で話が進んでしまうことは明白。
そんなの嫌だ。
まだ彼氏なんていたことないのに。
結局、また自分でどうにかするしかないというわけだ。
私はほとんど身投げするような覚悟で口を開いた。
「……青島さん」
「なんだ」
「…………別れましょう」
「は?」
「アッハハハハハ!!!」
斬人が呆けたような声を上げる。
怖くて斬人の顔が見られない。
銭次がベッドをバシバシ叩きながら、大きな声で笑っている声が部屋に響き渡る。
これで青島さんの機嫌が悪くなったら狭川さんのせいだからな……!
未だに肩を震わせている狭川さんを黙らせたいのを我慢し、私は固唾を飲んで青島さんの反応を待った。
「あ゛っ、アハ、あの青島さんが、ふっ、振られ、じぇいけっ、イヒヒャハハハ!!」
「……仕方ねえか」
えっ嘘!
私が伏せていた目線を弾かれるように青島さんに合わせると、青島さんは諦めたような顔をしてため息を吐いていた。
解放されるという喜びが心の底から湧き上がってくる。
なんだ、青島さんって言えば分かってくれる人じゃん!
もっと早く言えば良かった。
「──銭次、あの変態ジジイに電話かけろ。いいモデルが見つかったぞってな」
「え?」
