突然体を折り曲げて笑い出した彼を見て、さあっと血の気が引いた。
逃げるという選択肢がすぐに頭の中に浮かぶが、それはすでに試して失敗している。
加えて、あまり考えたくはないが、彼らには自分の名前も学校名も割れてしまっている。
運良く逃げられたとしても、意味がないのかもしれない。
どんどんマイナスな方へ思考が沈澱していく中、ヒーヒー言っていた彼が目尻を擦りながら口を開いた。
「はあー、いっちゃんって面白いっスねえ。でもまあ、逃げたいなら逃げても構わないっスよ?追いかけるのは大好きっス……」
「っ……」
「あははは!やっぱり良い顔するっスね!」
「お前拷問はやらないんじゃなかったのか?」
「そうだったんスけどねえ。いっちゃんのせいで新しい扉開きそうっスわ」
ふいにあの裂けたような笑みで見据えられ、私は勢いよく目を逸らした。
苦手すぎる。
視界の端でまた笑い出している彼が見え、私は助けを求めるように隣の男に目を向けた。
「なに?言いたいことがあるなら聞いてやるけど」
そう言って彼が目を細めるが、そんなの多すぎて言葉にならない。
「っ……」
「んー?ありすぎて言葉にならないって顔っスねえ。んじゃ、とりあえず自己紹介でもしとくっスか?俺は狭川銭次。銭ちゃんって呼んでいいっスよー!」
誰が呼ぶか。
「青島斬人。特別に呼び捨てでいいぞ、一千映は俺の恋人だからな」
……は!?
まったく話が見えない。
斬人が何を言っているのか分からず凝視してしまうが、斬人は不思議そうに首を傾げるだけ。
それが更に混乱を招き、私は目を合わせたまま黙り込んでしまう。
「遠慮しなくていいんスよ?」
すると、何か勘違いをしている銭次から見当違いの気遣いが飛んでくる。
いや呼んでいいよって言われたけど初対面だし呼びづらいなぁとか思って黙ってるわけじゃないし。
内心そうは思いながらも、狭川さんに突っ込む勇気は持ち合わせていないため、私は何も返さずに無言で頭を回転させる。
恋人扱いされている理由も気になるが、ここから出られない理由が分からない。
