唯聖との出会いは、中学一年の時だった。
唯聖とは特別仲が良かったわけでもなかったが、席が近くなった時とかによく話しかけてくれたりして、俺からすると優しくて面白い陽キャ、という印象だった。
中二になると唯聖とクラスが離れ一度疎遠になったが、中三になると再び同じクラスになり、色々ときっかけが重なって交流が増え、いつしか親友と呼べるくらいに仲が深まっていった。
「俺、琳太と同じ高校に通いたかったわ」
体育館で学年全体の進路指導が終わり、教室まで帰る道のりで唯聖がそう呟く。
唯聖の家は教育に熱心で、唯聖自身も真面目に勉強をしていたのもあり、唯聖は学年で成績がダントツの一位。
もちろん、唯聖が行こうとしている高校は偏差値が県内でトップスリーに入るほどの進学校で、俺には到底届きそうもない学力の所だ。
唯聖はわざとレベルを下げて俺と同じ高校に行こうとしていたが、さすがに親に止められたらしい。
「……俺、今から勉強頑張ってみようかな。俺も唯聖と同じ高校行きたいし」
「本当か?琳太は今目指してる高校の方が絶対合ってる気がするけどな。俺の高校だと、入学した後絶対キツイぜ」
「で、でも……唯聖と高校違ったら俺、友達いなくなるよ」
唯聖はなんだそんな事か、そんな事気にすんなよ、と笑いながら言った。
こっちは結構真面目に友達がいなくなる事を危惧しているのに、友達の多い唯聖にその深刻さは分からないみたいだった。
「もし高校違ってもさ、俺が琳太の高校に毎日迎え行くから一緒に帰ろうぜ」
冗談抜きで琳太抜きの学校はさすがにキツい、と顔をしかめながら少し俯く。
「そんなに?」
俺は思わず聞き返した。
もちろん俺だって唯聖と離れるのはつらいが、唯聖は俺以上に寂しく思ってたりするのかな、なんて思う。
すると、唯聖は隣で難しい顔をする俺を覗いて悪戯っぽい顔をした。
「なんで琳太がそんな寂しそうな顔顔すんの。……琳太も俺と会えなかったら、嫌?」
「そ、そりゃ嫌だけどさ!ていうか近いよ!」
「あ、照れてる。相変わらず琳太はかわい……」
「あーもうやめろー!てか照れてないし!」
唯聖は俺の髪をわしゃわしゃとかき混ぜて満足げな笑みを浮かべた。
そう反論すると、でも身体は正直だからなーと言って、もうそろそろ俺が痺れを切らすと思ったのか俺の隣を離れて小走りで教室に帰っていった。
……耳が熱い。顔も熱い。
唯聖はいつもこんな感じだ。
俺を揶揄って楽しそうにする。
別に悪口を言われてるわけじゃないから全然いいんだけど、「照れてんじゃん」とか「可愛い」とか、まるで女の子に言うような言葉を俺に掛けてくるから、その度にドキッとしてしまう。
唯聖はきっと、俺のことをただの友達だと思って接している。
だから、そんな甘い言葉を掛けられたくらいで簡単に惑わされてしまう俺の方がおかしいんだろう。
……もしかしたら俺、ゲイだったりするのか?
まさか、という考えが頭をよぎる。
けれど、俺は今まで女の子ばかり好きになってきた。
自分に限って、そんなことは天地がひっくり返ってもないだろう。
それに、唯聖はただ友達として俺に接してくれている。
それなのに、俺がその言動にいちいちドキッとしてしまうのは、なんだか唯聖に失礼な気がした。
