奇跡を起こして、願いを叶えて。

また違う日。

みんな慣れてきて、そこそこ準備が進んだころ。

また放送が流れて、みんな帰ったあと、私は一人で残って床を拭いていた。

あんまり手伝えてないんだから、ちょっとぐらい役に立ちたいと思ったんだ。

ちょっとぐらいなら遅れてもいいって、さくちゃんに教えてもらった。


「私が外に出してあげる!」


って言ってたから、多分大丈夫。

そんなわけで、絵の具のついた床を拭いていると、ガラガラっとドアが開く音がした。


「さくちゃーん、ちょっと待って〜」


誰もいないはずだからって、後ろを振り向かずにそう言ったのは失敗だった。


「………え?」


明らかにさくちゃんではない声がして、後ろを振り向くと、いたのは白石くんだった。


「…あっ! ごめんなさい、どうしたの?」


私が謝ると、


「いいよ。スマホ、取りに来たんだ。穂高さんは、何してるの?」

「少しでも役に立ちたくてさ」


白石くんは、自分も雑巾をとってきて、床をふこうとしてる。


「いや、いいよ! やんなくて!」

「いいよ、やるから」


完璧な王子様スマイルで言うけど、私には効かない!

好きだけど!

だから、だめ。

役に立ちたいのに、やらせたみたいになる。

白石くんの手から雑巾を取り、分かりやすく怒った顔をする。

それくらいすれば、きっと諦めてくれるはず。


「白石くん、さっきみんなのこといっぱい手伝ってたから。

白石くんがいなくなったら、劇できないんだから、疲れないように、元気でいなきゃ。だから、今くらいいいんだよ」


一瞬、完璧スマイルだった白石くんの表情が驚いたように変わった。

そのあと、さっきの完璧スマイルとは違って、普通の男の子って感じの爽やかな笑顔になった。


「ありがと、穂高さん。でも、一人だけ帰るのはなんかだめだし、待ってるよ」


白石くんと帰れるってことかな…

それは嬉しいかも。


「ありがとっ! すぐ終わらせるね」