事の始まりは、夏希が言い出したこと。
里香(りか)ちゃんっていう、本が好きな子が、劇の台本を作ってくれることになったんだけど、
ヒーローは王子様で、なんの異論もなく白石くん。
そこまでは良かった。
問題は、ヒロインなの。
町娘の子っていう設定。
里香ちゃんはこだわりが強いタイプで、キャスティングが大事だ、って意気込んでた。
秋野さんは華やかすぎて、町娘って感じがしないらしい。
私は、夏希がやるかなって思ってた。
そういうの好きだし、夏希は華やかっていうより、ナチュラル美人だし。
里香ちゃんもそう思って、夏希にオファーしたの。
「夏希ちゃん、やらない? ナチュラルだから、いい感じだと思うの」
目を輝かせて、やってもらう気満々でね。
「え、私? 未空の方が良くない? 可愛くて、素朴っていうか? ナチュラル? 声も可愛いし」
夏希は全くやる気がなかったみたいで、むしろ、
「ていうか、私ヘアメイクとかやりたい。未空かわいくしたい」
って言ってる。
私がやる前提で言うのやめて…?
それに、私なんかにできるわけないじゃん!
なのに、里香ちゃんは、
「…っ! 確かに…!未空ちゃんは盲点だった…!」
って。
他の子たちも、文句は言わない。
白石くんのことは好きだけど、自分がやる気にはなれないみたい。
「いや、私、できないよ…」
抵抗してみるけど、やる気になった里香ちゃんは誰にも止められない。
「未空ちゃんで決定でお願いします!」
って、学級委員に言っちゃった。
「未空ちゃん、いい?」
みんな、次のこと考えてる。
私が止めてる場合じゃない感じか…。
「分かった…。やるよ……」
「ありがとう! じゃあ次!」
