不運すぎる私が入学した学校には、強運すぎるボス?がいました

大吉くんと教室へ向かっていれば、ビシビシと感じる視線。そして話し声の中に「総長が…」「『姫』が…」という単語が聞こえてくることから想像するに、もうすでに多くのアラクレたちは昨日の件について知っているらしい。

一夜にしてこの影響力、さすが暴走族の総長と言ったところ…。


「どうしよう…私『姫』とやらになるつもりないのに」

「大丈夫ですよ。人の噂もなんとやらと言いますし、それよりもすごいビッグニュースが学園中を駆け巡るかもしれませんし」

「人の噂も七十五日だよねぇ…耐えれるかなぁ…」

「人って意外とすぐ忘れるものですよ」


爽やかに微笑んで隣を歩く大吉くんのその言葉、信じてもいいのだろうか。いや、今はこの男の強運に縋るしかない。



教室につくと、いつも遅刻ギリギリの朝比奈くんが珍しく席に座っていた。
私と大吉くんが朝の挨拶をし、靴箱に薔薇が入っていたことや愛の果し状のことについて話していれば、廊下がバタバタと騒がしくなる。

まさか…『姫』候補になった私を別のクラスのアラクレたちが見に来たとかそんなんじゃないよね?!


「なーんか、今日は落ち着かねーな?」

「クラスの人たちも何人か走って出て行きましたし……喧嘩ですかね?」

「大吉くん…なんでちょっとワクワクしてるの…」


どうやら私を見に来たわけではなくて、別の何かがあったらしい。アラクレクラスメイトの情報通、ヨシダくんが真っ先に教室を出て行ったから、後で何かしらの情報が私の耳にも入ることだろう。
…別にその情報を望んでいるわけではないのだけれど。

三人で、大量の薔薇をどうするかについて話し合っていたところで、ヨシダくんが大慌てで教室に戻って来る。


「た、大変だ!」


顔を真っ青にしているヨシダくんの元に、朝比奈くんが席を立って近づいて行った。


「ヨシダ、どーしたんだよ?」

「あ、東総長に……」

「!…東総長に何があったんだよ!」


東総長という単語を聞いたアラクレクラスメイトたちは一斉にヨシダくんを見た後、私のほうへ視線を向ける。ちなみに、なんのこっちゃわかっていない私はぶんぶんと首を振って両手を上げた。
何も知らない、わからない。


「東総長に『姫』が出来たらしい」

「はあ?臼井は断っただろーが!」

「違う!S女の美人が『姫』になったんだって!今朝、その美人が東総長と一緒に登校してきたんだよ!」


どうやらヨシダくんの情報では、東総長が登校してきたとき、S女子学園(隣町にあるちょっとやんちゃな高校だ)の美人といちゃいちゃしていたと。しかも「ハニー」「ダーリン」呼びで、それはそれは幸せそうだったと…。

……え?私は、一体…?


「ふふ、穏やかじゃないですねぇ…」

「……なんでちょっと笑ってるの、大吉くん」