モノツキ落とし~ウワサの幽霊くんは地獄から来た名探偵!?~

「はい」

 声をかけられて、私は顔を上げる。
 いつの間にか男の子が、目の前に立っていた。

 彼は私の手のひらに、ころんと何かを置く。

 それは愛菜ちゃんの、ウサギのキーホルダーだった。

「あ、ありがとう」

 私は可愛いウサギさんを、まじまじと見つめる。

 ……こ、これ、また黒い煙とか出てこないよね?

「大丈夫。それはもう、普通のキーホルダーだ」

「えっ? あ、そ、そうなんだ!」

 まさか心を読まれた!? と、私はびっくりする。

 いや、あんなアニメや漫画みたいなことしてたんだから、心を読むくらい普通かも?
 どっちみち、すごい子だ。

「えっと、私まだ頭が整理できてないんだけど。あの煙みたいな幽霊……【モノツキ】? が、これに取り憑いて操ってたってことなの?」

 だんだんと落ち着いてきた私は、これまでのことを理解したくて、男の子に質問する。

「うん」

 男の子はうなずいた。

 じゃあ、キーホルダーが無くなったのは、誰かが隠したのでも、うっかり失くしたのでもなく、あの【モノツキ】が直接キーホルダーを移動させてたからだったんだ!
 でも……いったい、なんでそんなことを?

 首をかしげる私に、男の子は言った。

「幽霊は生者の負の感情を取り込むことで、強くなれる。だからああいう悪い幽霊は【モノツキ】になって、人を悲しませたり、争いが起こるよう仕向けたりするんだ」

「争い……あっ」

 私は、昨日から今日にかけての五年二組の様子を思い出す。

 みんなお互いに疑い合って、ギスギスしていた。
 そこにあったのは、どろどろして冷たい気持ち……間違いなく、負の感情だ。

 男の子が【モノツキ】の存在を見抜いてくれなければ、【モノツキ】はみんなの負の感情を取り込んで、どんどん強くなっていただろう。
 もしかしたらさらに別の事件を起こして、五年二組はもっとひどい状態になっていたかもしれない。

 知らず知らずのうちに、私たちの日常は壊されつつあったんだ。

 私はキーホルダーをきゅっとにぎりしめ、身震いする。

「しかしあの【モノツキ】、なかなかずるがしこい奴だったな。キミが事件のことを教えてくれなきゃ、あいつの存在に気付けなかった。助かったよ」

「ううん、お礼を言うのは私の方だよ! 本当にありがとう!」

 感謝の気持ちをせいいっぱい伝えたくて、私は男の子の手をぎゅっと握る。
 彼の手は氷みたいに冷たかったけれど、そんなことくらい構わなかった。

「……あったかいね」

 男の子はぽつりとつぶやく。

「それ、大事にしなよ。じゃあね」

 なんだか意味深な言葉だ。
 「それ」って、いったい何だろう……。

 私がその答えを思い付くより先に、男の子は霧みたいに消えていった。