モノツキ落とし~ウワサの幽霊くんは地獄から来た名探偵!?~

 私と愛菜ちゃんは目を丸くする。

 なぜなら、さっきまで私たち以外誰もいなかったのに、いつの間にかあの男の子が目の前に立っていたから。

「だ、誰……?」

 愛菜ちゃんは震え声で尋ねる。

 それもそのはず。

 私は彼を知っているけれど、愛菜ちゃんは彼の顔も、彼が幽霊だってことも知らない。
 びっくりして当然だ。

 しかし男の子は、愛菜ちゃんの質問には答えず、彼女の持つキーホルダーへと目を向けた。

「キミ、出てきなよ。もうバレてるから」

 えっ、と思わず私は声を出す。

 急に何を言い出すんだろう……と思った、その直後。

「ふん、めざといガキだ」

 低い男の声がして、愛菜ちゃんのキーホルダーがぶるぶると震え始めた。

「きゃあっ!?」

 愛菜ちゃんはおどろいて手を開く。

 宙に放り出されたキーホルダーが、ぽとりと床に落ちた。
 するとそこから、まるで何かを燃やした時みたいに、モクモクと黒い煙みたいなものが立ち昇ってくる。

「え、え、何!?」

 私と愛菜ちゃんは呆気にとられてその光景を見る。

 黒い煙は、私たちの目の前でどんどんふくらんで、やがて人間みたいな形になった。

 うんと見上げるくらいの背丈に、私の頭くらいすっぽり入っちゃいそうなくらい大きな手。
 顔のあたりには赤い点がふたつ、らんらんと光っている。

 私は恐ろしいその姿に、気が付けば足がぷるぷると震えていた。

「オ、オバケ……!?」

 隣にいた愛菜ちゃんが、ふらっと倒れ込む。
 怖さのあまり、気を失ってしまったみたいだった。

「愛菜ちゃん!」

 私は彼女のそばに膝をついて、ぐったりとした体を抱える。

 私たちを見下ろす煙のオバケは、もはやモンスターだ。

 男の子とは全く違う、嫌な雰囲気がめちゃくちゃに漂っている。
 いったいどんなことをしてくるのか、悪い意味でわからない。

 でも絶対、愛菜ちゃんのことは守らなきゃ!

 私はオバケを、キッとにらみつける。
 お前なんか怖くないぞ! という気持ちを込めて。

 しかし、オバケは一瞬だけ嫌そうに目を細めると、私たちから顔をそらし、男の子の方に目を移した。

 あれ、もしかして私、相手にされてない……?

「なぜ俺がこのキーホルダーに取り憑いているとわかった?」

 じろり、とオバケは男の子を睨む。

 男の子はすました顔で、肩をすくめた。

「単純な推理さ。キーホルダーが見つかった場所は、昇降口の窓枠の上。試しに見てきたけど、ちょっと上を見れば誰にでも見つけられるところだった。誰かがキーホルダーを盗んだり、隠したりしたいなら、そんなところに置くわけがない。人目に付きやすすぎるからね」

 床に転がるキーホルダーを見ながら、彼は言う。

「それに、窓枠の上っていうのは、子どもには高すぎる。投げれば届くかもしれないけど、あの狭い幅にちょうど乗せるのはかなり難しいだろうね。大人なら、『職員室』っていうもっと良い隠し場所があるから、そもそも窓枠に置く理由は無い」

 あ、確かに! と、私は納得する。

 私はキーホルダーに手が届かなくって、ほうきを使ってようやく回収できた。
 それはつまり、私と同じくらいの身長の……五年二組のみんなでも、手が届かないってことだ。

 私が145cm、ほうきが1mちょっとで、合計2m45cmくらい。
 それでギリギリ届いたんだから、例え六年生の先輩たちや、あのやよいちゃんだって、さすがに無理だろう。

「あらゆる面で不自然なんだよ、キーホルダーがあんな場所にあるなんて。……キーホルダー自身が、自分を探す誰かさんから、慌てて逃げようとしたわけでもない限りね。違う? 【モノツキ】」