モノツキ落とし~ウワサの幽霊くんは地獄から来た名探偵!?~

「中山さん?」

 アラタ先生がびっくりして、私の方を見る。
 クラスのみんなも、いっせいに私に注目した。

 するとネズミは、ちょろりと尻尾を動かして、私の腕にのぼってきた。

「わああっ! す、すみません、ネ、ネ、ネズミがっ……!」

 私はもう大パニックだ。

 その場でぐるぐる回ってネズミを振り落とそうとするけれど、ネズミは器用に手足を使い、ついに肩の方までやってくる。

 も、もうだめだ! かじられちゃう!

 ……と、私が覚悟をした時。

『落ち着きなよ』

 耳元から、あの男の子の気だるげな声がした。

 私はぎょっとして、周囲を見回す。
 けれど彼の姿はどこにもない。

 いったいどこから?

 ネズミに怯える心より困惑が勝ち、私は首を傾げる。

 するとまた、男の子の声が。

『ここだよ。ここ』

「あっ……!」

 そこでやっと私は気付いた。

 男の子の声は、私の肩によじ登ってきたこの白いネズミからしているのだ。

『昼休みになったら、例のキーホルダーの持ち主を誰も居ない場所に呼び出して。キーホルダーごとね』

「あ、愛菜ちゃんを?」

『よろしく。じゃ』

「ちょ、ちょっと……!」

 私が引き留めようとするのに構わず、男の子の声を発するネズミは、ちょろりと私の肩から降りてどこかへと走り去っていった。

「甘音ちゃん、大丈夫?」

「うん……」

 気遣ってくれるやよいちゃんにぎこちなく頷きながら、私はイスに座り直す。

 うう、まだ心臓がどきどきしてる……。

 でもおかげで、次にやるべきことがわかった。
 昼休みに、愛菜ちゃんをどこかへ呼び出すんだ。

 それで何が起こるのかは、まだわからないけれど、きっとあの男の子が準備をしてくれているに違いない。

 私は私に任せられた役割を、しっかりやろう!

 ざわざわした空気が収まっていく教室の中、私はぎゅっと机の下で拳を握った。