モノツキ落とし~ウワサの幽霊くんは地獄から来た名探偵!?~

 びっくりするくらい、あっさりした答えだ。

 普通なら冗談だと思ってしまいそうだけど、今、私がいるのは他でもない、裏体育館倉庫だ。
 それに、うまく言えないけど不思議な雰囲気が、彼にはある。

 ウワサの幽霊本人に違いない!

 私はそう確信して、男の子を改めて見上げた。

「あの! 私、中山甘音って言います。あなたにお願いがあるんです!」

 男の子は首をかしげ、じっと私を見ている。

 「夕方の四時に裏体育館倉庫に行くと、幽霊が出る」。
 このウワサには、続きがある。

 それは「幽霊は頼みごとを聞いてくれることがある」というもの。

 何を隠そう、私はこの後半の話を目当てに、ここへやって来たのだ。

「私のクラス……五年二組で、事件があったの。そのせいで、みんなケンカみたいになっちゃってて……。あなたの力で、真相をあばいてほしいの!」

 言い終わってから、私は途中から敬語を忘れてしまったことに気付いて、口を手で覆う。

 男の子の気にさわってしまっただろうか。

 ちらりと様子をうかがうけれど、彼は特に不機嫌そうな感じではなかった。
 でも機嫌がよさそうでもなくて、頬杖をつくと、ため息まじりにこう言った。

「事件って、どんな」
「愛菜(あいな)ちゃんっていう子のキーホルダーが無くなったの。がんばって探したら、見つかったんだけど、誰が隠したのかっていう話になって……」

「ふうん。大変だね」

 ものすごく興味が無さそうな反応だ。
 今にも「じゃあ、バイバイ」とか言われてしまいそう。

 私はそんなふうに話を終わらされないために、あわてて続ける。

「も、もちろんただで手伝ってなんて言わないよ! ほら、これ!」

 上着のポケットから、私は用意してきたものを取り出す。

 それを見た男の子は、ちょこっとだけ起き上がった。
 かと思えば、跳び箱からふわっと浮き上がるみたいにして降りてくる。

「……これは給食に出るゼリーと見た」

 彼の言う通り、私がポケットから出したものはゼリー、そして紙のスプーンだった。

 ゼリーの味はレモン。
 どこかの地域で特産の、何とかレモンを使っているらしい。

「給食の時に食べずに、職員室の冷蔵庫であずかってもらってたんだ。おいしいよ!」

「僕にくれるって?」

「うん!」

 私はすぐにうなずく。

 元々ウワサの幽霊にあげるつもりで持ってきたものだから、ちっとも惜しくない。

 ウワサの幽霊、もとい男の子は、私とゼリーを交互に見る。

 それから、私の手からゼリーとスプーンを受け取ると、気だるげだった表情を少しキリッとさせて言った。

「キミは実にいいヤツだな。わかった、力を貸そう」