『もう、好きじゃないことにした』


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蓮と離れてから、私は新しい職場で働き始めた。

今までとは何もかも違う場所。

一緒に働く人も、仕事のやり方も、毎日見る景色も違った。

最初は、分からないことばかりだった。

失敗してしまうこともあったし、
帰る頃にはくたくたになっている日もあった。

それでも、分からないままにしたくなくて、
教えてもらったことは一つずつ覚えていった。

「莉央ちゃん、これお願いしてもいい?」

「はい!」

できなかったことが、できるようになる。

一人で任せてもらえる仕事が増えていく。

そんな小さな変化が、嬉しかった。

ある日、職場の系列店であるカフェが、人手不足になっていると聞いた。

そこは、私がもともと好きだったカフェだった。

新作が出るたびに飲みに行ったり、
一人でふらっと立ち寄ったりすることもあった。

いくつか店舗を展開しているカフェで、
私も近くのお店によく通っていた。

そして、なにより――
蓮といつも一緒に行っていた場所だった。

「もしよかったら、カフェのほうも手伝ってみない?」

そう声をかけてもらって、

「……はい。やってみたいです」

私はそう答えた。

カフェでは、また覚えることが増えた。

注文の取り方。
ドリンクの作り方。
店内のこと。
お客さんへの声のかけ方。

慣れないうちは緊張して、
何度も頭の中で確認しながら動いた。

それでも、少しずつできることが増えていった。

「ありがとう、助かったよ」

そう言ってもらえると、
疲れていても自然と笑顔になった。

気づけば、毎日が忙しく過ぎていった。
仕事に行って、
帰ってきて、
眠って。


また次の日が来る。

以前なら、何をしていても蓮のことを考えていた。

けれど今は、
目の前の仕事に追われているうちに、
一日が終わっていることも増えた。



蓮からは今も毎日連絡が来る。

仕事の合間にふと携帯を見ると、
蓮からのメッセージが届いている。

すぐに返せるときもあれば、
気づいたまま返すタイミングを逃して、
夜になってしまうこともあった。

それでも、時間ができたときには返していた。

もちろん、忘れたわけじゃない。

ふとした瞬間に思い出すことはある。

それでも私は、
そのたびに立ち止まることはしなくなった。

寂しくても、
会いたくても、
自分で決めたことだから。

新しい場所で、
新しい人たちに囲まれて。

少しずつ、自分の毎日を作っていく。

「今日も頑張ろう」

そう小さく呟いて、
私は仕事へ向かった。