『もう、好きじゃないことにした』


***

「来ると思ってた、それより顔色悪いわよ、?」


美玲はカフェの席に座っていた。

蓮は座るなり言った。


「そんなことどうでもいい、莉央に何を言った」

「前にも言ったでしょ。本当のこと」

「全部話せ」

「……」

「俺とお前が別れた理由も」

「蓮」

「全部だ」


蓮の目は真剣だった。


「もう俺が悪者になって終わらせるのはやめる」

美玲は少し黙った。

そして、ため息をついた。


「……分かった」

「私たちが付き合ってた頃。」

美玲が話し始める。


「あなたのお父さんの会社が大変だった時期があったよね」

蓮の表情が変わる。


「……知ってたのか」

「あの頃、近所の人からたまたま聞いちゃったの。」

「なんで言わなかった」

「蓮が言わなかったから」


美玲は苦笑した。


「私、別れる前に何度も聞いたじゃない?何かあったんじゃないかって」

「……」

「でも蓮は、ずっと『何もない』って言った」

「……うん」

「最後には、突然『好きじゃなくなった』って」


蓮は俯いた。


「……ごめん」

「今さら謝られても困る」


美玲は笑った。


「でも、私はずっと納得できなかった」

「……」

「だから莉央ちゃんに話した」


蓮が顔を上げる。


「何を?」

「私たちが別れた理由と私のことを蓮が捨てたってこと。」


蓮は目を閉じた。


「……余計なことしたな」

「そうだね」

「俺は莉央に話すつもりだった」

「じゃあ、早く行けば?」


蓮は立ち上がった。


「……そうする」


美玲が呼び止める。


「蓮」

「何?」

「私、まだあなたのこと好きよ、諦めてないから」


蓮は少しだけ黙った。

でも。


「……ごめん」

それだけ言った。

「俺はもう、莉央しか好きじゃない」

そして振り返らずに店を出た。