「美玲。」
「ん?」
いつものように笑う美玲を見て、
胸が苦しくなった。
それでも、言わなきゃいけない。
「……俺たち、別れよう。」
「……え?」
美玲の笑顔が消えた。
「なんで……?」
「もう、好きじゃないから。」
「……嘘。」
「嘘じゃない。」
「最近、会えてなかったからそう思ってるだけじゃないの?」
「違う。」
できるだけ、冷たく言った。
「俺、バイト先の人を好きになったんだ。」
「……え?」
「もう、付き合ってる。」
美玲は言葉を失った。
「……いつから?」
「結構前から。」
「私といるより、その人といるほうが楽しいの?」
「うん。」
「……その人といるほうが、落ち着く?」
「うん。」
美玲の目に、涙が浮かんだ。
「じゃあ……私は?」
「…好きでもないのに一緒にいるの疲れるし」
「お前のこともう…要らないから。」
「……蓮。」
「だから、もう俺とは別れて。」
「嫌だよ…ッ…」
美玲は涙を拭いながら、俺を見た。
「私、まだ蓮のこと好きだよ。」
その言葉を聞いた瞬間、
胸の奥が痛くなった。
それでも俺は、目を逸らした。
「……ごめん。」
「でも、俺はもう美玲のこと好きじゃない。」
「だから、終わりにしよう。」
俺はそのまま、美玲に背を向けた。
「……蓮!」
後ろから、美玲の声が聞こえた。
足を止めそうになる。
でも、振り返らなかった。
「私、まだ諦めないから!」
「……」
「絶対、諦めないから!」
その声を背中で聞きながら、
俺はその場を離れた。
全部、嘘だった。
本当は、別れたくなんてなかった。
それでも俺は、
美玲に嫌われることを選んだ。
あいつには、俺なんかじゃなくて、
自分の未来を歩いてほしかった。
その後
俺は、第一志望の大学に合格した。
そして親父も無事に回復した。
けれど、以前のように仕事を続けることは、
難しく、会社はしばらく続いたものの、
俺が大学に通っている間に廃業することになった。
結局、俺は家業を継がず、
大学卒業後は大手企業に就職したけど…
あの時…
美玲と別れた時…
俺は決めた。
もう、誰かを本気で好きになるのはやめよう。
好きになれば、いつか誰かを傷つける。
だったら、最初から本気にならなければいい。
……そう思っていた。
大学生の頃
莉央と出会うまでは。
