『もう、好きじゃないことにした』

そして、昨夜。

「蓮…あのさ…」

「ん?」

「…もし私がいなくなったらどうする?」
「は?」

「私、蓮のこと好き」

「……うん」
「今も、すごく好き。……だからね」

莉央は涙を堪えながら笑った。

「好きになればなるほど、いつか急に捨てられちゃうのが怖くなっちゃって……」

「…これ以上好きになったら、私、立ち直れなくなっちゃう」


「……ッ !捨てるわけないだろ!」



「……うん。ごめんね、変なこと言って。」

「……今日はもう寝よっか。」

蓮の胸に、嫌な予感が広がる。

「莉央」

「今日はもう寝よう?」

「待って」

「おやすみ」

寂しそうに笑っていた、
あの時の莉央の顔が頭をよぎる。


あの時そのまま何も聞かなかった自分を
殴り倒したかった。


一度目のSOSに、
莉央の怯えや葛藤に、
どうして気づいてやれなかったのか。


すでに、
莉央は美玲の言葉に怯え、
自分から身を引く決意を固め始めていたのだ。


「……俺からいなくなんなよ。頼むから……!」


美玲との過去も、
あんな終わり方をした理由も、
全部逃げずに莉央に話す。

三年間ずっと、本当は誰を想い続けていたのかも。



莉央を失うくらいなら、


どんな過去でも全部さらけ出す。


蓮はまだ朝日も差さない早朝の静かな街を、莉央を探して走り続けた。

――話したくなかった。

莉央には。

できることなら、一生知られたくなかった。



それは、蓮にとって美玲との過去が後ろめたいからではない。

むしろ逆だった。

あの頃の自分は、美玲のことを大切にしていた。



だからこそ。

あんな終わらせ方しかできなかったことを、
今でも後悔している。