『もう、好きじゃないことにした』

 


「蓮、?」

ある日の夜。

蓮と莉央が一緒に歩いていると、
後ろから女性の声がした。


蓮が振り返る。


その瞬間、少しだけ目を見開いた。

「……美玲?」

莉央も振り返った。

そこにいたのは、綺麗な女性だった。


大人っぽくて、蓮と並んでも違和感がない。



むしろ





――すごく似合っている。

 
「やっぱり!蓮だ!私こっちに転勤して来たの!」

美玲は笑った。


そして、莉央を見る。

「……彼女?」
「ああ」


蓮は当たり前のように莉央の肩を抱いた。

「俺の彼女」
「へえ」

美玲は莉央をじっと見た。


その視線に、莉央は少しだけ緊張した。

「初めまして」
「初めまして。本田美玲です」
「桜井莉央です」

「美玲って呼んで!
よろしくね、莉央ちゃん。」

「美玲さん、よろしくお願いします!」

そう言って笑った美玲は、
なぜか少し意味ありげだった。

「蓮、連絡先変わってない?」
「変わってないけど」
「じゃあ、あとで連絡するね」

「なんで?」
「ちょっと話したいことあるから」

「……?」

「莉央ちゃんだっけ?
こっちに越してきたばっかりで
ここら辺のことあまり分からないから
連絡先交換してもいい?」

「あ、はい、もちろん!」

蓮は莉央と美玲が連絡先を交換する様子を
不機嫌そうに見ている。


美玲はそれ以上何も言わず、

「じゃあね」

と手を振って去っていった。


莉央はその背中を見つめた。

「……知り合い?」
「高校の時の一個上の先輩
…当時付き合ってた。」


「……そっか」


蓮はすぐに莉央の顔を見る。

「でも、本当に昔の話だから」


「うん。分かってる」
「何か気になる?」

「…ううん、大丈夫!
それより早く金ロー見なきゃ!始まっちゃうよ!」

莉央は笑った。


蓮の手を引いて急いで蓮の家へ向かった。






蓮も安心したように笑った。










 ――この時は、まだ。