『もう、好きじゃないことにした』

 

蓮はゆっくり振り返る。

そして、もう一度だけ
莉央の部屋の前へ戻った。

ドアの前に立ち、
震える息を吐く。

 
「……莉央」
声が震える。

「俺、どうしたら信じてもらえる?」
「……」
「教えて」
「分からない」
「じゃあ、待つ」
「……」

「何年でも待つ」

「そんなの無理だよ」
「無理じゃない」
「蓮は、そんなに一途じゃない」

その言葉に。

目から涙が落ちた。


「……違う」





蓮side end

────










蓮の声が震えていた。

莉央は、ドア越しにその声を聞いて、
息を呑んだ。





蓮が、泣いている。



声を聞けば分かる。




こんな蓮の声を聞いたのは、
初めてだった。 



「俺、ずっと莉央だけだった」

「……」

「本当に」

「……」

「誰といても、何してても」

「……」




「莉央が好きなんだ」


蓮の声が震えている。



「でも、俺が馬鹿だった」

「……」

「莉央が俺を好きなのを知ってて、甘えてた」

「……」

「だから、俺が何しても
莉央は離れないと思ってた」

蓮は涙を拭う

「でも違った」

「……」

「莉央がいなくなって」

「……」

「俺、何もできなくなった」



その声を聞いた瞬間。



莉央の目からも、
堪えていた涙がこぼれた。



「……っ」



声を押し殺すように、
口元を手で覆う。





ドア越しに聞こえる蓮の声が、
今までよりずっと近く感じた。




莉央も、泣いていた。