カイくんは部屋に食べ物や飲み物を持って来ては
『何か口にしないとダメだよ。』と、優しい微笑みをくれるが、とても喉を通らなかった。


どうにもならない黒い感情を消したくて、下唇を噛み締めて、握り締めていた拳に、ずっと何も言わなかったカイくんがそっと手を置き

「もし凛ちゃんが望むなら、凛ちゃんのお父さんに会いに行かない?」

『えっ?』驚く私に、
カイくんは微笑みながら『実は、凛ちゃんのお父さんはある国の王様で、
自分はその国の人間なんだ。』ということを話してくれた。

俄には信じられなかったけど、ふとあの女が昔言った言葉が蘇ってきた。

『父親は遠い誰も知らないような小さな国の王子様よ。』
それに何より、こんな気持ちから逃げられるのなら何でも良かった…

だから健にメールを送った。

一言『さようなら』
と…


やっちゃんにもメールを送った。

『心配かけてごめんなさい。でも、何かもう何も考えたくない、どうでもいい…
カイくんと一緒で、
父親に会いに行くかも知れない。

捜さないで下さい。』

二人にメールして直ぐまた携帯の電源は切った。


どんな反応が返ってくるのかやっぱり怖かったから…