「矢萩…」

予期せぬ声に体がビクリと反応した。


心臓がドクンと音をたてた…

恐々振り向くと、そこには、額の汗を拭いながら息を弾ませ穩雅先生が立っていた。


どんな顔したらいいのか分からず、慌てて作り笑いをして尋ねた。

「先生、どうしたんですか?」

顔を見たら目頭に熱いものが込み上げてきた。

グッと堪えると、声が微かに震えてしまった。


その瞬間私は先生に腕を引かれその胸に収まっていた。


突然のことに思わず『キャッ』と小さな悲鳴を挙げて、固まる私に

「ごめん…」

そう言って先生は、抱きしめた腕に力を込めた。