『凛へ

卒業おめでとう。
お祝いに、私の宝物を贈ります。

これは、アンタリアから貰ったブレスレット、
私と彼を繋いでいた物。
今は凛、貴女が私と彼を繋いでいる宝物です。

だからコレを持っていて下さい。

そんな大切な物貰っていいの?とか思ったりしないでね。

そのうちもっといいの買って貰うから。

那智より』


健は、私の腕にそのブレスレットを付けてくれた。

その時、ボソッと「偶然だな…」と呟いた健の言葉は、私には聞こえなかった。


消毒液と窓からほのかに流れてくる春の匂いが、
穏やかな二人の空間を、
温かく包み込んでいた。