カイくんの足音が遠ざかって、離れたのが分かり
藻掻いてみるが、動かない…

それどころか、ふと意識が遠のいていく。


どうしよう…健。

その時、
「凛!」
「凛!」

聞き覚えのある二人の声に、俯いた頭を何とか上げてみる。

良く見えない…
見えないけど…分かる…

瞬間、体をグッと引き寄せ、抱きしめられ

「凛、凛、凛、……」

何度も名前を呼ばれる。


やっぱり…

この声
この温もり…

「…た・け・る・?」

必死に声を出した。


バッと体を離し私の顔を見る健の微笑む顔が見えた気がして、私も微笑んで、安心と同時にそこで再び私の記憶は途絶えた…。