月華嬢と黒月

――放課後。

「ねえ、今日みんな暇じゃない!?」

麗愛が月華嬢のメンバーに声をかける

「暇ーー!!」

「え、今日絶対遊びたい!」

「分かる! なんか今日テンション高い!」

「じゃあ遊び行こーよ!」

「プリクラ撮りたい!」

「クレープも!」

「ゲーセンも行きたい!」

「カラオケも行こ!」

「え、全部行ったら絶対夜じゃん爆笑」

「別によくない?」

「それな!」

一瞬で予定が決まっていく。

「じゃあ今日は、全員で遊び倒そ!」

「「「いぇーーーい!!」」」

麗愛も笑いながら拳を上げる。

(こういう時間、大好き)

学校では優等生として過ごしている麗愛も、月華嬢のみんなといるときだけは、何も考えずに騒げる。

今日は、思いっきり遊ぶ日だ。

――――――――――

まず向かったのは、プリクラ。

「待って、今日盛れすぎじゃない!?」

「いや、うちのほうが盛れてるし!」

「は!? それはない爆笑」

「ちょっと待って、全員こっち向いて!」

「え、ポーズどうする!?」

「とりあえずギャルっぽいやつ!」

「それもう毎回やん!」

「いいの! 盛れれば勝ち!」

十人でぎゅっと集まって、何度も撮る。

「次、ハート!」

「次は全員しゃがも!」

「え、身長差やば!」

「爆笑!」

「麗愛、顔ちっさ!」

「やめてよ〜!」

「いやマジで小さい!」

撮り終わったプリクラを見て、全員で大騒ぎ。

「これ待ち受けにしよ!」

「絶対する!」

「グループにも送って!」

「保存した!」

麗愛もスマホを見ながら笑う。

(みんなで撮ると、やっぱり楽しいな)

――――――――――

そのままクレープ屋さんへ。

「何にする!?」

「いちご!」

「チョコバナナ!」

「うちアイス追加!」

「え、盛りすぎじゃない?」

「今日カロリーとか気にしたら負けだから!」

「それな爆笑!」

「麗愛は?」

「んー……いちごとチーズケーキ!」

「可愛っ!」

「それ麗愛っぽい!」

「じゃあそれにする!」

十人でクレープを持って、また写真を撮る。

「ちょっと、写真撮るなら一口食べて!」

「なんで!?」

「そのほうが映える!」

「はいはい爆笑」

くだらないことで笑って、食べて、また笑う。

それだけなのに、すごく楽しい。

――――――――――

次はゲーセン。

「これ欲しい!」

まひろが大きなぬいぐるみを指差す。

「絶対取って!」

「任せて!」

「いや、無理でしょ爆笑」

「取れるし!」

何度も挑戦して――。

「取れたーーー!!」

「え!? マジ!?」

「すご!」

「天才じゃん!」

「持って帰れる!?」

「でかすぎ爆笑!」

全員でぬいぐるみを囲んで大笑いする。

「今日めっちゃ楽しくない?」

「楽しすぎ!」

「帰りたくない!」

「じゃあカラオケ行く?」

「行こーー!!」

――――――――――

カラオケでは、最初から最後まで大騒ぎ。

「次、麗愛!」

「え、私!?」

「歌って!」

「みんなも歌ってよ!」

「もちろん!」

マイクを回しながら、十人で歌って、踊って、笑って。

「やば、声枯れた!」

「まだ歌えるでしょ!」

「無理爆笑!」

「じゃあ次、失恋ソング!」

「急に!?」

「恋バナしたくなってきた!」

その一言で、空気が変わる。

「じゃあ恋バナしよーよ!」

「賛成!」

「麗愛から!」

「え、私!?」

「最近どうなの?」

「……どうって?」

「蓮翔!」

「ちょっと!」

「顔赤くなった!」

「なってない!」

「絶対なってる爆笑!」

麗愛は頬を押さえる。

(……恥ずかしい)

「でも、蓮翔って優しいよね」

「ほらーー!!」

「惚気じゃん!」

「違うって!」

「で、手つないだ?」

「……まだ」

「えーー!」

「まだなの!?」

「でも一緒にいると楽しい」

「それ一番いいやつじゃん」

麗愛は少し照れながら笑った。

「うん。楽しいよ」

(また一緒に遊びたいな)

――――――――――

夜。

帰る前にコンビニへ寄る。

「スイーツ買お!」

「プリン!」

「アイス!」

「シュークリーム!」

「え、さっきクレープ食べたよね?」

「知らなーい!」

「別腹!」

「それな!」

十人で好きなものを買って、近くのベンチに座る。

昼間の騒がしさが少し落ち着いて、自然と恋バナが続いていく。

「ねえ、みんなってどんな人がタイプ?」

「優しい人!」

「一緒にいて笑える人!」

「ちゃんと大事にしてくれる人!」

「顔も大事じゃない?」

「それはもちろん!」

「爆笑!」

麗愛も笑う。

「私は……一緒にいて安心できる人がいいかな」

「麗愛らし!」

「分かる!」

「そういう人が一番いいよね」

そんな話をしていた、そのとき。

「……実はさ」

一人のメンバーが、小さく口を開いた。

「今日……彼氏と別れた」

「……え?」

一瞬、みんなが黙る。

「振られちゃった」

そう言った瞬間、その子の目から涙がこぼれた。

「……そっか」

麗愛が隣に座る。

「大丈夫?」

「……うん。でも、無理かも」

「泣いていいよ」

麗愛がそっと肩を抱く。

すると、

「いや、無理して笑わなくていいから」

「今日はいっぱい泣こ」

「うちら全員いるし」

「一人じゃないじゃん」

「てか、こんな可愛い子泣かせるとか、そいつ見る目なさすぎ!」

「それな!!」

「マジでありえない!」

「もっと大事にしてくれる人いるって!」

「今は無理に次の恋探さなくていいよ」

みんなが次々に声をかける。

泣いている子は、涙を拭きながら笑った。

「……みんな、優しすぎ」

「当たり前じゃん」

「仲間でしょ?」

「一人にするわけないじゃん!」

麗愛も笑う。

「今日はいっぱい泣こう」

「明日からどうするかは、明日考えればいいよ」

「……うん」

その子はまた泣いた。

でも今度の涙は、少しだけ嬉しそうだった。

――――――――――

帰り道。

十人で夜道を歩く。

さっきまで騒いでいたのに、今はみんな少し静かだった。

麗愛は夜空を見上げる。

月が静かに輝いていた。

「……ねえ、みんな」

「ん?」

「月華嬢って、強い女の子たちの集まりって思われてるけど」

みんなが麗愛を見る。

「本当は、こういうところなんじゃないかな」

「こういうところ?」

「泣いたときに、そばにいてくれる場所」

麗愛は笑った。

「一人じゃないって思える場所」

静かに、みんなの顔を見る。

「月のように優しく、華のように強く」

「……」

「私、みんなとこうやって笑っていられるのが、一番好き」

凛空がふっと笑った。

「麗愛らしいね」

「うん!」

「じゃあ決まり!」

まひろが立ち上がる。

「今日は泣いた分、明日はいっぱい笑お!」

「賛成!」

「賛成ー!」

「またみんなで遊ぼうね!」

「絶対!」

十人の笑い声が、夜の街に響いた。

麗愛はその声を聞きながら、静かに笑う。

(学校では、普通の女の子)

(夜は、月華嬢の総長)

でも――

(ここにいるときは、ただの私でいられる)

(みんなと笑って、みんなと泣いて)

(この10人がいるなら、きっと大丈夫)

夜空には、大きな月が浮かんでいた。

――月華嬢。

強くて、優しくて。

恋をして、泣いて、笑って。

そんな普通の女の子たちの物語。