サーカス&バンドの年の差恋愛

車の中で、愛斗は正子の手をそっと握りしめると、そのままそっと唇を重ねた。
走り出す前のほんのりとした時間、ふたりだけのキスは、いつもよりも優しく甘く——。
「……帰ろう」
「うん、帰ろう」
家に着くと、すぐにリビングへと向かい、再び抱きしめ合うようにキスをした。
柔らかなキスから始まり、ふたりは肩を寄せ合い、手をつなぎ、頬を擦りつけ合い——イチャイチャと甘い時間を過ごした。
「テレビでも見よう」
「うん、一緒に見よう」
並んでソファに座り、テレビをつける。番組の音声だけが部屋に響き、ときどき笑い合い、肩が触れ合うたびにそっと手を繋ぎ直す。
そうしているうちに、外はすっかり夜になっていた。
「お腹空いたね。何か食べに行く?」
「うん、うどん屋さんに行こう」
ふたりは近くのうどん屋へと入り、鍋焼きうどんを注文した。熱々の器が運ばれてくると、湯気が立ち上がる。
「熱いから気をつけて」
と言い合い、息を吹きかけて冷ましながら、少しずつ食べ進める。
だしの温かな味が体中に染み渡り、ふたりは時折目を合わせて笑いながら食べた。食後は冷たい水を飲んで一息つき、コンビニに寄ってから家へと帰った。

「先にシャワー浴びてきなよ」
「うん、一緒に入る?」
「ふふっ、順番に入ろう」

それぞれシャワーを浴びてさっぱりとした後、愛斗はカフェオレを作ってきて、テーブルに置いた。

「正子さん、今からインスタライブしてもいいかな? ファンの人たちに近況報告だけでも」
「いいよ! 私も一緒に出てもいい?」
「もちろんだよ。正子さんが一緒なら、みんなも喜ぶ」

スマートフォンをセットし、インスタライブを配信する。愛斗が話し、正子も隣から笑顔で応え、コメントにも時折反応しながら、和やかな時間が流れた。約一時間後、配信を終了する。

「お疲れ様」
「お疲れ様。でも楽しかったね」

そのままベッドへと入り、寄り添って眠りについた。
——朝。目覚めると、窓からは明るい日差しが差し込んでいた。
「おはよう、正子さん」
「おはよう、愛斗くん。今日はコンサートだね」
ふたりはゆっくりと起き上がり、朝の支度を整え、コンサートツアーへの準備を進めた。荷物をまとめ、家を出ると、一路空港へと向かった。
空港のロビーには、ありさ、高、勇一、そしてスタッフたちがすでに集まっていた。
「おはよう! 愛斗くん、正子さん」
「おはよう、みんな。集まったね」
打ち合わせや軽い話をしながら全員が揃うのを待ち、チェックインを済ませ、飛行機へと乗り込んだ。愛斗と正子は隣同士の席に座り、離陸を待つ。
「山口、楽しみだね」
「うん。初めて行くけど、きっといいところだよ」
手荷物入れからコンビニで買っておいたパンとお菓子を取り出し、ふたりで分け合って食べながら話し込んでいると、機体はゆっくりと滑走路を離れ、空へと舞い上がった。上空では景色を眺めながら、仕事のこと、コンサートのこと、これからののこと——話は尽きることがない。
やがて飛行機は山口の空港に到着。滑走路に着陸し、エンジンの音が静かになると、ふたりは手を取り合って「着いたね」と微笑み合った。
荷物を受け取り、空港の出口へと進むと、観光バスが待機していた。全員で乗り込み、愛斗と正子は並んで席に座る。窓の外には見慣れない景色がゆっくりと流れ始め、ふたりは肩を寄せ合い、これから始まる旅の時間を楽しみに——穏やかに話し続けた。