覚ました愛斗は、ゆっくりとリビングへと向かった。そこには正子が先に起きていて、窓辺で朝の光を浴びていた。
愛斗は何も言わず、そっと後ろから抱きつくように近づき、正子の柔らかなほっぺにそっとキスをした。
「おはよう、正子さん」
「おはよう、愛斗くん。ふふっ、いきなりびっくりしちゃうよ。でも……嬉しいな」
愛斗はそのまま正子をぎゅっと抱きしめ、バックハグの体勢のまま、しばらくお互いの温もりを感じ合った。
朝の穏やかな光の中で、二人の心はすっかり満たされていた。
「さあ、朝ごはん食べよう」
「うん、一緒に食べよう」
並んでキッチンに立ち、朝ごはんを囲む。手作りの味が口いっぱいに広がり、二人の笑顔がこぼれる。
食後はゆっくりと外出の準備を整え、車に乗り込んだ。向かう先はスポーツ施設。
車は約一時間、景色がゆっくりと流れていく中、二人はたくさん話をしながら過ごした。
駐車場に車を停め、施設へと続く道を歩いていると、一人のおばあちゃんがゆっくりと近づいてきた。
「はい、これあげる」
手渡された飴を、二人は笑顔で受け取った。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
おばあちゃんは愛斗の顔を見上げ、尋ねた。
「ねえ、牛乳が買いたいんだけど、どこで買えるか知ってる?」
愛斗はふとおばあちゃんの足元と手元を見た。
履かれている靴が左右で違っており、持っているビニール袋の中には牛乳パックが七本も入っていた。
——これは認知症の方だと、愛斗は直感的に判断した。
「おばあさん、一緒に行きましょう」
正子と顔を見合わせ、二人はおばあちゃんを誘導して警察署へと向かった。
署に着くと、ちょうど介護士の方がおばあちゃんを探していたところだった。
「本当にありがとうございます! 朝から探していたんです。助かりました」
心からの感謝を受け、おばあちゃんは介護士の方と共に帰路についた。
警察の方と簡単な手続きを済ませ、外に出ると、正子が不思議そうに愛斗に尋ねた。
どうして認知症だって、すぐにわかったの?」
愛斗は少し照れくさそうに笑って答えた。
「仙道敦子さんっていう女優さん、知ってる? 彼女がドラマで熟年の認知症の役を演じてたんです。その演技が本当に上手くて、すごく印象に残っていたから。だから、すぐに気づいたんです」
「へえ、そうなんだ。仙道敦子さん、きれいな人だもんね。愛斗くん、ああいう人がタイプなんだね」
「いえ、それに……正子さんも綺麗ですよ」
突然の言葉に正子は顔を赤らめ、愛斗はそっと唇を重ねた。
「ありがとう」
「うん、俺の方こそ」
——スポーツ施設に到着。
入場料を払って中に入り、まずはボルダリングへ。愛斗は軽やかに壁を登っていくが、正子はまだ不安そうに下から見守っている。
「愛斗くん、すごい! あんなに高いところまで、らくらく登っちゃうんだから」
「正子さんも、慣れたら絶対できるよ。今度一緒に挑戦しよう」
約三十五分楽しんだ後、次はテニスコートへ。ラケットを振り、ボールを追いかける。
風を切る感覚が心地よく、二人は三十五分間、汗を流しながら笑い合った。
そして最後はローラースケート。ヘルメットをしっかりと装着し、滑り出そうとするが、正子はまだ立つのもやっとの様子。
愛斗はそっと手を差し伸べ、しっかりと手を繋いだ。
「大丈夫、ゆっくりでいいよ。俺が絶対に離さないから」
「愛斗くん……頼ってもいい?」
「もちろんだよ」
正子は愛斗の腕にぎゅっと抱きつくようにして、バランスを取りながら少しずつ滑り方を覚えていった。
一時間後——手を離しても滑れるほどに上達し、二人は並んで楽しそうに施設の中を滑っていた。
「すごい! 正子さん、もうすっかり上手だよ」
「愛斗くんのおかげだよ。手を繋いでると、安心してどこまでも滑れる気がするの」
施設の出口にある自動販売機で冷たい飲み物を買い、一休み。汗を拭いながら、また次の話題で盛り上がる。
休憩を終え、施設を出ると、近くにある落ち着いた雰囲気のカフェへと入った。
窓際の席を確保し、メニューを開く。
「私、オムライスにしようっと。ふわふわたまごがおいしそう」
「じゃあ俺はパスタにする。あと、コーヒーも二つお願いしよう」
注文を済ませ、コーヒーを飲みながらゆったりと話を続ける。さっきのおばあちゃんのこと、スポーツ施設でのこと、これからのこと——話は尽きることがない。
やがて料理が運ばれてくる。見た目にも鮮やかなパスタと、ふわふわのオムライス。
二人は「いただきます」と声を揃え、笑顔で食事を楽しんだ。味わい深い時間はゆっくりと流れ、気づけば二時間が過ぎていた。
カフェを出る頃には、日が少し傾き始め、柔らかな夕暮れの光が二人を包んでいた。
「今日は本当に楽しかったね」
「うん、最高の一日だよ。正子さんと一緒だから、どこへ行っても楽しいんだ」
手を繋ぎ、車へと向かう。
愛斗は何も言わず、そっと後ろから抱きつくように近づき、正子の柔らかなほっぺにそっとキスをした。
「おはよう、正子さん」
「おはよう、愛斗くん。ふふっ、いきなりびっくりしちゃうよ。でも……嬉しいな」
愛斗はそのまま正子をぎゅっと抱きしめ、バックハグの体勢のまま、しばらくお互いの温もりを感じ合った。
朝の穏やかな光の中で、二人の心はすっかり満たされていた。
「さあ、朝ごはん食べよう」
「うん、一緒に食べよう」
並んでキッチンに立ち、朝ごはんを囲む。手作りの味が口いっぱいに広がり、二人の笑顔がこぼれる。
食後はゆっくりと外出の準備を整え、車に乗り込んだ。向かう先はスポーツ施設。
車は約一時間、景色がゆっくりと流れていく中、二人はたくさん話をしながら過ごした。
駐車場に車を停め、施設へと続く道を歩いていると、一人のおばあちゃんがゆっくりと近づいてきた。
「はい、これあげる」
手渡された飴を、二人は笑顔で受け取った。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
おばあちゃんは愛斗の顔を見上げ、尋ねた。
「ねえ、牛乳が買いたいんだけど、どこで買えるか知ってる?」
愛斗はふとおばあちゃんの足元と手元を見た。
履かれている靴が左右で違っており、持っているビニール袋の中には牛乳パックが七本も入っていた。
——これは認知症の方だと、愛斗は直感的に判断した。
「おばあさん、一緒に行きましょう」
正子と顔を見合わせ、二人はおばあちゃんを誘導して警察署へと向かった。
署に着くと、ちょうど介護士の方がおばあちゃんを探していたところだった。
「本当にありがとうございます! 朝から探していたんです。助かりました」
心からの感謝を受け、おばあちゃんは介護士の方と共に帰路についた。
警察の方と簡単な手続きを済ませ、外に出ると、正子が不思議そうに愛斗に尋ねた。
どうして認知症だって、すぐにわかったの?」
愛斗は少し照れくさそうに笑って答えた。
「仙道敦子さんっていう女優さん、知ってる? 彼女がドラマで熟年の認知症の役を演じてたんです。その演技が本当に上手くて、すごく印象に残っていたから。だから、すぐに気づいたんです」
「へえ、そうなんだ。仙道敦子さん、きれいな人だもんね。愛斗くん、ああいう人がタイプなんだね」
「いえ、それに……正子さんも綺麗ですよ」
突然の言葉に正子は顔を赤らめ、愛斗はそっと唇を重ねた。
「ありがとう」
「うん、俺の方こそ」
——スポーツ施設に到着。
入場料を払って中に入り、まずはボルダリングへ。愛斗は軽やかに壁を登っていくが、正子はまだ不安そうに下から見守っている。
「愛斗くん、すごい! あんなに高いところまで、らくらく登っちゃうんだから」
「正子さんも、慣れたら絶対できるよ。今度一緒に挑戦しよう」
約三十五分楽しんだ後、次はテニスコートへ。ラケットを振り、ボールを追いかける。
風を切る感覚が心地よく、二人は三十五分間、汗を流しながら笑い合った。
そして最後はローラースケート。ヘルメットをしっかりと装着し、滑り出そうとするが、正子はまだ立つのもやっとの様子。
愛斗はそっと手を差し伸べ、しっかりと手を繋いだ。
「大丈夫、ゆっくりでいいよ。俺が絶対に離さないから」
「愛斗くん……頼ってもいい?」
「もちろんだよ」
正子は愛斗の腕にぎゅっと抱きつくようにして、バランスを取りながら少しずつ滑り方を覚えていった。
一時間後——手を離しても滑れるほどに上達し、二人は並んで楽しそうに施設の中を滑っていた。
「すごい! 正子さん、もうすっかり上手だよ」
「愛斗くんのおかげだよ。手を繋いでると、安心してどこまでも滑れる気がするの」
施設の出口にある自動販売機で冷たい飲み物を買い、一休み。汗を拭いながら、また次の話題で盛り上がる。
休憩を終え、施設を出ると、近くにある落ち着いた雰囲気のカフェへと入った。
窓際の席を確保し、メニューを開く。
「私、オムライスにしようっと。ふわふわたまごがおいしそう」
「じゃあ俺はパスタにする。あと、コーヒーも二つお願いしよう」
注文を済ませ、コーヒーを飲みながらゆったりと話を続ける。さっきのおばあちゃんのこと、スポーツ施設でのこと、これからのこと——話は尽きることがない。
やがて料理が運ばれてくる。見た目にも鮮やかなパスタと、ふわふわのオムライス。
二人は「いただきます」と声を揃え、笑顔で食事を楽しんだ。味わい深い時間はゆっくりと流れ、気づけば二時間が過ぎていた。
カフェを出る頃には、日が少し傾き始め、柔らかな夕暮れの光が二人を包んでいた。
「今日は本当に楽しかったね」
「うん、最高の一日だよ。正子さんと一緒だから、どこへ行っても楽しいんだ」
手を繋ぎ、車へと向かう。

