勉学に励むなら帰宅部でもいいと母親は言ってくれていたけれど、みんなが羨ましくなってしまった。色々考えているうちに教室に到着し、自分の席へと視線を投げる。

……そこにはもう山地くんが座っていて、槇野くんもいつもはしっかり前を向いているくせに、この日は身体ごと山地くんに向けていた。4人で楽しそうに話している。その様子に足を止めて見ていた。
「唯ちゃーん、おはよう!」
後ろを向いていた槇野くん、由紀恵、梨花子がぱっとこっちを見た。山地くんに声をかけられてハッとして慌ててそこに加わった。

「おはよう」
席の前までくると山地くんが立ち上がる。

「あ、いいよ。トイレ行ってくるし、座ってて」
鞄を机の横にかけるとトイレへと向かった。鏡の前には浮かない顔の自分がいた。

笑ってたな、槇野くん。私が望んだ景色がそこにあった。なのに浮かない顔はなんだろう。これがきっと“自分の中で決着”をつけないといけない感情なのだ。

両方の中指できゅっと口角を上げてみせた。よし!心の中でそういって、教室へと戻った。

私に気づくと、山地くんは立ち上がり「もう戻るね」と前の席へと帰った。

槇野くんも前へ向き直った。見えるのは背中だけ。いつもの背中だけだ。