空を見る余裕もなく話し込んでしまい、もう帰る時間は過ぎてしまっているだろうに、母親はそっとしといてくれているようだ。空はすっかり暗い。だけど、とても清々しい空気が流れていた。

「高校ってほんと中学は何だったんだろーってくらい、先輩優しいよ」
3年生になったら私がクッキング部を変えてやるなんて言ってた由紀恵は、もう変える気もないくらい部活を楽しんでいた。
「そうそう、私も思った」
だから、大丈夫って二人は槇野くんに言った。
「みんな色々あんのに、俺だけ情けないな」
ボソッと言った槇野くんに

「なーに、挫折したことなかっただけの話~。うらやま~」山地くんがそれを茶化すように明るく吹き飛ばした。
「ほんとほんと、16でダンクできるなんて、うらやま~」
私も山地くんに“追いうらやま”した。

「「「え?」」」

シーンと静かになってしまった。

「槇野、ダンク出来んの?」
「うん」

槇野くんの恨めしそうな顔に、手でごめんのポーズをした。そうだ、この人恥ずかしがりやさんなんだった……。

「ええ、見たかったなあ」
由紀恵が心底残念そうにそう言った。暗くて見えない……と呟く。

「よし、いっちょ、格好つけてやる」
槇野くんはボールを片手に走り出した。