「教室には入れなかった。そしたら次の日の持ち物も何もかもわからなくて……何やってんだろうね」
「うん、でも……一人ぼっちは寂しいよ」
「楽でいいと思ったんだけどなあ。本当、そうだね」

槇野くんは鞄からボールを取り出すと指先で回した。回しながら、私の方へと差し出す。私も指を1本立てて、槇野くんの指があるところへと持っていく。ぱっと器用に槇野くんが私の方へとボールを移動させた。私の指の上をくるくるくるくる。少しくすぐったい。アンバランスに揺れるのを必死に保とうとする。やっぱりバランスが崩れそうになって指から落ちる。地面に落ちる前に槇野くんがキャッチしてくれた。
「ダメだなあ」
「練習、練習! コツさえ掴んだら、こうやって顔でも回せる」

そう言うとぽいっと上げたボールをおでこで回し始めた。

「え! すごい! 」
上に向けてた顔を正面に戻しボールをキャッチする。

「ねえ、ダンクした時より反応良くない?」
「え、そんなことないよ、ダンクもすごかった」
「はは! 格好つけたいからねー、俺」

これは、度々先輩に言われた言葉だろうか。

「見て、でこで回したら、ちょっと赤くなるから恥ずかしい」
自分の髪をかきあげると、ボールの回っていた場所を指さした。