「何のためにバスケするんだろって、バスケがメインになる高校への進学は決められなかった。こんなことで……」
「こんなことじゃないよ、槇野くん。こんなことじゃ……」
今度は躊躇せずに背中に触れた。

「ごめん」
謝る彼に首を横に振った。何て言っていいかわからない。傷ついたのは、彼の優しさだと思う。仕方がないと思う。チームに置いて勝つことが目的である限り、誰かは悔しい思いをしてそれでもチームにいたいと思う葛藤を、私は知っている。選ばれなかった事がない人のことなんて考えたこともなかった。いいなあって思っていただけだった。

「俺がそいつといて穏やかでいられたのは……レギュラー争いに関係ないからだったのかなって。無意識で下に見てたのかなって……もしそうなら、傷つけた」

ただ首を横に振った。違うんだよって言ってあげたかった。その人の話をするとき、ちゃんと優しい顔をしていた。槇野くんはそんな彼に何も言い返さなかった。自分だって傷ついたのに。
「ちゃんと、その人のこと好きだったと思う。その、見たことないけど、でも……絶対そうだったと思う!」

私がそう言うと、槇野くんはふっと微笑んだ。その笑顔に力はなかったけれど

「何もかも、わからなくなったんだ」

バスケが好きかどうかすらも、そんなニュアンスだった。