「そういや、槇野って彼女いんの?」
 まさか、私の決意しても聞けなかった質問を全員揃ったチャイム後の先生が来るまでの短い時間にあっさり訊かれるなんて……山地くん、恐るべし。

「そっか」
 え、そっか!?何、答えたの?
 びっくりして聞き耳を全力で立てていた私はまさか、槇野くんが声に出さずに頷くか首を振るかのジェスチャーで答えるとは思わなかった。見てなかったー!それに、「唯ちゃんは?」と、私も訊かれるとは思わず、必死でぶんぶんと首を振った。
「そっか。俺も」
 山地くんはそう言うと、前へ向き直った。

「りっくん、本当自由だわ」由紀恵がケラケラ笑った。
 ええええ、どっち?
 気持ちをどこへ持っていっていいのかそわそわしながら、仕方なく私も授業へと気持ちを……切り替えられるわけもなく、いつもより遅めの背中堪能タイムへと入った。

 ブレーキ、全然利かないんだけど。堪能というより、恨めしく背中を見ていた。今日も槇野くんの机の右サイドには大きな鞄が下がっていた。

 シルバーブルーのボールが私の中でround and round(くるくるくるくる)胸の内っかわが忙しい。

 長い腕、大きな手……

「宮原~、黒板見にくいのか? 」
「あ、いえ、大丈夫です」
 先生に言われて慌てて体を真っ直ぐにした。

「見すぎ~」両隣からウィスパーボイスが聞こえた。