工藤先輩は格好いい。知ってる。でも彼女がいること、唯は知ってるし、警戒してたからいいんだけど……こっちはすっごいノーマークだった。

「山波先輩、いいですか?」
 唯が男バス(こっち)に来るときは、だいたい山波先輩に用事。女バスは今、3年生にマネージャーが一人いるけれど、主務はいない。チームが強くなって、今年から主務を設置するってことらしい。だから、すごい色々山波先輩に聞いてる。熱心でいい。いいんだけど……全員が唯を近くで見ることになるし
「俺、アリだな」
 とか言ったの誰だよ。

「足が綺麗」って、見るなよ。どこ見てんだよ。
「ちっちゃい」って、ああ見えて女子の平均身長あるんだよ!靴下履いて 、だけど。

「あの子、熱心で可愛いんだ」
 山波さんまで、そんなこと言うから気が気でない。

「山波先輩、俺は? 俺も熱心だし」
「重いっての、槇野」
「わははー、山波懐かれてんねー」
「うん、槇野、可愛いんだよ」

 うん。満足。山波さんのことも好き。

 ──

「唯、一緒に帰ろう!」
 俺はこの日、そう声をかけた。

「え、槇野付き合ってんの?」
 そう聞かれて、そうだって言いたいけど

「まあ、もうすぐ」
 って言ってしまった。でもそう思えるくらいにはなっていた。