「……槇野、1本1本丁寧にいけよ」
「はい」
「体力ねえな、お前」

 ……ブランクがキツい。コート、こんな広かったっけ。くっそう、山波先輩め。よく見てる。

「もうダメ、俺無理。おんぶ」
こんな事を言っても平気。山波先輩は結構がっしりしてる。後ろから乗っかって思った。

「何? やたら懐いてんてね」先輩たちが疑問顔。

「なーんか、可愛いんだよ、槇野」
 山波先輩がそう言った。

 ──
 中学の時の先輩たちが、自分の中で消化できずに、俺に悪態ついてぶつけてきていた、そんな負の感情をこの人は前向きに変換してくれる。

 この人のお陰で、俺はいつの間にかその頃のトラウマを消化していた。この人が、消してくれた。

 ──工藤先輩いわく、山波先輩はすっごい褒め上手らしい。その気にさせるのがうまいって。コーチとペアで飴と鞭。たぶん、まんまと乗せられた。

かなりのキレもの。セルフプロデュース力が半端ない。『主務として3年間チームに貢献しました』と上手くアピール。先生からの信頼も厚かったので校内査定においてトップレベルの評価もらい、一枠しかなかった有名私大の指定校推薦を勝ち取ったらしい。ただでは起きない。

それから、彼女がめっちゃ可愛い。いいお父さんになりそうだもんなあ。女子からモテるに違いない。

 俺ももちろん、大好きだ。

 ここは、すごいいいチームだと思う。縁の下の力持ち(山波先輩)がいるから。