「で、何でここまで来たの?」
そう訊くと
「槇野くん、バスケするんだなあって。何でだろう。そう思ったら嬉しくて」
そう言って控え目に笑った。

「宮原さんもバスケ、するんだ?」

これ、バスケやってるやつはわかるんだけど、何かバスケやってるやつに出会うと嬉しい。

 特にその時は嬉しかった。何でかわからないけど、いつもより嬉しかった。

「ま、槇野くん、明日! 明日ね。また明日!」

 大して面識のない俺のところに走ってきて、笑って、嬉しいって言って……『また明日』って言った。それだけの事が嬉しかった。知らない人ばかりの学校で、知らない人ばかりじゃあ、なくなった。

 その日は、ボールを触るだけじゃなくて、宮原さんの事を少しだけ考えた。

『また明日』って言われた翌日は、背中に「おはよう」って言われた。
「うん」って返せた。

 河川敷に行くのはいつも通り。でも、宮原さんの家はそこだって聞いて、目をやった。どの部屋かなって。

 じゃあ、宮原さんがベランダからぶんぶん手を振って、そしたらあっという間に俺の目の前までやってきた。

 いつも何でかバタバタして、笑ってる。バスケっていう共通の話題、家がすぐそこ。それだけのこと。

 それだけのことで、俺は曇ってない日があるって気づくことが出来た。