少し時間を置いて、槇野くんが口を開いた。

「ずるくない?」
「……何がよ」
「俺だけ、格好悪いとこ見せてさ」
「格好悪い……? 槇野くんいつも格好いいけど」
 深く考えずに言ってしまい、あ、と思ったけれど、まあいいかと変に冷静だった。えっと、隣の人……よりは。

「え、何、格好いいの、俺……」
 ふいっと背を向けてチラリと見える耳が真っ赤だ。槇野くんの腕の中のカケルがビクリと体を震わせたから、槇野くんの腕に力が入ったのだとわかる。

 そうだ、この人……恥ずかしがりやさんだったな。時々意地悪なくせに。

「そうだよ、格好いいよ。モテてるでしょ」

 最近、話しやすくなって、表情も柔らかくなったせいで、女子からの人気も上々だ。

「……宮原さんの……好みとは違うけど……」
「はあ?」
 何だそれ。

「……最近、俺に冷たくない?」
 その言い方に可笑しくなって久しぶりに彼の横でお腹を抱えて笑った。

「……笑うとこか……」
 槇野くんが不貞腐れた。

「冷たくないよ、普通だよ」
「……そっか。全然こっち見ないから」
「私、後ろの席だもん」
「まあ、そうだけど……ねえ、やっぱり……その、何か悩んでるなら聞きたい」

 驚いて、ポカンと口を開けた。

「俺が悩んでる時、聞いて貰ったし……」

 この前の、梨花子の質問に強く答えちゃったこと、槇野くんにも伝わっちゃったんだ。

「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫」そう言って立ち上がった。
 槇野くんはまだ何か言いたそうだったけれど、私は寛いでるカケルのリードを持って引いた。